パリ、テキサス ヴィム・ベンダース監督作品 | 想像と創造を膨らませるビジネスチューインガム

想像と創造を膨らませるビジネスチューインガム

ビジネス、ランニング、とにかく取り組んでいること、何かの糧になる?ことについて書き綴っています。多少の個人的な見解と偏見はご了承ください!

パリ、テキサス デジタルニューマスター版 [DVD]
 
¥3,160
Amazon.co.jp


ライクーダーのややけだるい音楽にのせて流れるロードムービー。アメリカを舞台にしているものの、よくありがちな陽気さは無縁です。そして超大作にあるようなスペクタクルな感動もありません。しかし見ているときも、見終わった後もなんともいえないリアルで、静かな気持ちの揺らぎがあります。


学生の時に初めて見て、何度か見ている映画の一つ。1984年カンヌ国際映画賞パルムドール受賞作品。監督のヴィム・ベンダースは後に「ベルリン、天使の詩」を作った名監督で、ドイツ人。この映画はまだ東西ドイツに分かれていた時代の映画です。


あらすじとしては単純。


放浪に出ていたトラヴィスと呼ばれる男が街に戻ってきて、弟夫婦に預けられていた一人息子のハンターとともに家出をした妻ジェーンを探しに出かける。


そしてついにジェーンをある店先で見つける。その店は客とマジックミラー越しに話をしながら、肢体を見せる風俗店のようなところ。


トラヴィスはそこで最初素性を明かさずにジェーンと話をする。そして話を進めていくうちにジェーンはそこにいるのがトラヴィスだと悟る。


最後トラヴィスはハンターのいる場所を伝え、再び放浪の旅に出る。



というような内容だったと思います。こう書いてしまうとそれほど深い感じはしないのですが、トラヴィスが全くしゃべらないで登場し、ハンターとの再会と再び親子としての通い合いとそれまで面倒を見ていた弟夫婦とのやり取り。そしてジェーンとの会話。


ヴィム・ベンダースの映画の中でも珠玉の作品と言えると思いますし、実際カンヌでパルムドールも受賞しています。さらにアマゾンの書評を見ても★★★★★が圧倒的に多いですから。


娯楽映画でもないし、感動超大作でもありませんが、こういうのが映画だなぁ、と僕自身は思います。最近見た中では「バベル」がそれに近い感じはしましたが・・・。


お薦めのシーンは、ジェーンが最初に登場する場面。バーカウンターのようなところで、振り向くシーンだったと思いますが、このときのナスターシャ・キンスキーの美しいことといったらないですね。ナスターシャ・キンスキーは特別好きな女優さんではありませんが、このときだけを切り取って語れば、これ以上ない美しさを放出しています。


そして圧巻はやはりトラヴィスとジェーンのマジックミラー越しの会話ですね。確か2回か3回ぐらいはトラヴィスが訪ねて、何もしなくていいから話をしようということで、二人は話をするわけですが、ここがやはりヴェンダースがヴェンダースたる所以が出ているシーンだと思います。


ほとんどがトラヴィスの独白で進むのですが、二人が無言になるシーンが、体感としては結構長い間あります。観客はその無言の中に含まれる何ともいえない二人を包みこむ感情を理解することを迫られます。想像力をもって、そのシーンを同時体験することになります。


ヴェンダースは小津安二郎のファンでもあるのですが、ここは小津安二郎の影響が出ているのかな、というところですね。構図もそうですし、無言のシーンが非常に重要な、無言であるがゆえにそこにある感情の深さを映像に映し出す手法というのが、小津が「東京物語」などで見せたやり方に似ているな、と思ったものです。


僕は好きな映画を聞かれると「ショーシャンクの空に」と答えることにしているのですが、こちらを答えるのは多少エンターテイメントの要素があり、メジャーな映画の方がわかってもらいやすいかな、と思ってそうしているのですが(もちろん「ショーシャンクの空に」も大好きなことに変わりはないのですが・・・)、やはり心のNo.1映画は「パリ、テキサス」かなと思うわけです。


ちなみに原作は脚本を書いたサム・シェパードの「モーテル・クロニクルズ」。ヴェンダースとシェパードは2005年にも「アメリカ、家族のいる風景」を制作。こちらは同じチームということで「パリ、テキサス」並みの期待をしてしまうので、まだ見ていないのですが、いつか見てみたいと思います。


アメリカ、家族のいる風景 [DVD]
¥3,701
Amazon.co.jp