失っていく感情ってある。


同じことをしても、同じようには感じられない。


失われた感情の記憶は蒸発したように見せかけて、体の内側のどこかの端にへばりつく。


沁みのように、薄い皮膚に一体化する。


それが、ある時、何かの不意に、思いだされる。


その時初めて、それが失われた感情だったんだと分かる。


感情が、ぐっと芯に迫る。


遠慮なく引き裂いて、引き裂いて、もといたところに落とし込まれる。


痛みと共に、ああ、こんな気持ちだったと、しっくりつながる。


もう会えないかもしれない、その感情が愛おしい。


数時間後にはさよならだけど、


またこの感情を感じられる自分でいたい。