小倉百人一首より92番

『恋の歌』

 

わが袖は 潮干に見えぬ 沖の石

人こそ知らね かわく間もなし

 

わがそでは しほ(お)ひにみえぬ おきのいし

ひとこそしらね かわくまもなし

 

 

1、歌意

私の着物の袖は、潮の引く時にも見えない沖の石のように

あなたには見えないでしょうが、涙のために乾く間もないほどです。

 

 

2、文法の解説と単語の意味

・潮干:潮が引くこと。

・みえ「ぬ」:打消しの助動詞。

・沖の石:浜辺の石は潮が引くと姿を現すが、沖の石は潮が引いても海の中にあり隠れている。

・人:世間の人。又は恋人。

・こそしらね:知らないだろうが。逆説。

「こそ」「ね」:係り結び。「こそ」強意の係助詞と「ね」打ち消しの助動詞。

・かわく間もなし:乾く暇もない。

・も:強意の係助詞。

 

 

3、鑑賞のポイント

「石によせる恋」がテーマ(題詠)

石というのは、「さざれ石」のように長い年月をイメージさせるもので、

この沖の石も何千年も誰の目にも止まらず、海水に浸されているとイメージすると、それは、恋する女性(作者が女性)が長い年月をかけて恋人を想い続けていることを匂わせている。

 

「私の袖は乾く間もなく涙で濡れている」様子を

それはまるで「海の中に沈んでいる沖の石のようにずっと濡れているのです」、と表現しています。

 

たとえ潮が引いても姿を現すことがない沖の石から、秘密の恋や人知れぬ恋心を思わせます。また、常に波の下にあり乾く暇がない沖の石から、ずっと涙に濡れている様子が伝わり、辛い恋をしていると想像できます。

 

思い浮かべる影像は、着物の袖を涙で濡らしている女性と海水の中の動かない沖の石。また動かない沖の石というで、女性の芯の強さを感じさせます。

 

沖の石は、普通名詞ですが、実際に存在する石(固有名詞)があるとも言われています。宮城県の末の松山近くにある石。または若狭の国の領地の石。

 

序詞

「潮干に見えぬ沖の石」が「乾く間もなし」を導く

 

和泉式部の歌に影響されていると言われています。👇🏻

「我が袖は 水の下なる 石なれや 人に知らねで かわく間もなし」

 

 

4、決まり字

わがそ・・・3字決まり

 

「わ」から始まる歌は全7首。

 

 

5、歌人

二条院讃岐(にじょういんさぬき)

女流歌人

この歌で「沖の石の讃岐」と呼ばれた。(当時斬新な表現で話題になった歌)

 

 

6、出典

千載集

 

 

 

7、私の一言

泣いてばかりの恋とはどんな恋なのでしょうか…

さぞお辛いでしょうに。

それでもあきらめられない強さを私は感じ取りました。

愛はその人を強く(石のような強さ)も

弱く(涙に濡れる弱さ)もするのですね。

 

 

 

8、メッセージ

 

人の輝かしい姿ばかりに

目を向けて羨ましいと思ってしまいますが、

人知れず泣いていたり努力していたりする

のかもしれません。

 

サッカー選手のあの輝きは

きっとそんな物の上にあり

思いの強さは全身に溢れていますね。

 

あなたの今の頑張りは無駄ではないと

思います。

私も自分を信じて頑張っています。

 

 

 

参考にしているサイト

百人一首の意味と文法解説(92)わが袖は潮干に見えぬ沖の石の人こそ知らねかわく間もなし┃二条院讃岐 | 百人一首で始める古文書講座【歌舞伎好きが変体仮名を解読する】 (honda-n2.com)

百人一首92番 「わが袖は 潮干に見えぬ 沖の石の 人こそしらね かわくまもなし」の意味と現代語訳 – EVRICA(エブリカ)

 

参考にしている本

・原色シグマ新国語便覧 増補三訂版  文栄堂

・カラーワイド 新国語要覧  大修館書店 (私が高校生の時のもの)

・百人一首(全) 角川ソフィア文庫

・ビジュアルでわかる 美しい和歌の世界 百人一首 成美堂出版

・百人一首を楽しくよむ 風間書院

・百人一首のひみつ100 主婦と生活社