二刀流は大谷がよそ者、馬鹿者、若者の日本人だからできた!?
イチロー選手の渉外契約のニュースは衝撃的だったが、
それでもやはり今のメジャーリーグの話題は、ロサンゼルス・エンジェルスの大谷翔平選手。
ということで今日は大谷選手二刀流について。
圧巻の3試合連続ホームランに翌日6回までパーフェクトという好スタートどころか衝撃的なスタートを切り、月間最優秀新人賞を受賞。
まだ始まったばかりとはいえ、ここまで世界最高峰のメジャーリーグでトップレベルのパフォーマンスを二刀流で実現させている。
二刀流での大活躍は100年前の野球の神様ベーブルースの再来とまで言われ、日本のみならず、アメリカのスポーツニュースでも常連の顔になりつつある
ただ一方、大谷選手のような二刀流を実現するアスリートは、スポーツ王国アメリカになぜ、今までいなかったのだろうか、という疑問が出てくる。
二刀流の選手を英語ではTwo-way Playerというが、1980年代後半~90年代にかけて、アメリカのプロスポーツ界では、アメリカンフットボールと野球、アメリカンフットボールとバスケットボールなどのように二つの異なるスポーツでの二刀流をこなす選手=Two-way Playerが続々と出てくるブームが起きた。
アメリカンフットボールのプロリーグであるNFLと野球のメジャーリーグの二つのトップリーグでトップクラスの活躍をする選手たち、ボー・ジャクソンやディオン・サンダースなどのような選手が一世を風靡し、ボ―・ジャクソンなどはナイキのプロモーションとも連動して、大スーパースターとなった。
私自身、1990年代後半~2000年代前半までアメリカ野球市場の現場に関わっていた。その時代は、前述のボー・ジャクソン、ディオン・サンダースの時代より、少し後の時代ではあったが、当時でもアトランタ・ブレーブスにブライアン・ジョーダンという、アメフトと野球の二刀流の選手がいたりした。(後半はもっぱら野球だったが)
その時代でも、二刀流といえば、2つの競技で活躍する選手を指し、野球で今の大谷選手のような、投手と打者での同時にこなそうという選手の話題はほとんど聞いたことなかった。それどころか、それをトライをしようとする動きすら、メジャーリーグ・マイナーリーグの現場レベルやメディアでは話題に上ってこなかったように記憶している。
当時は仕事、趣味の両面からマイナー選手の記事や情報も盛んに入手していた。投打の二刀流はまあ聞かない。成功例が稀なのはわかるのだが、チャレンジ精神旺盛なお国柄、せめてそのようなチャレンジすることだけでも、たちまちニュースになって目についたはずだが、そのようなトライのニュースはほとんどなかったように思われる。
投打の二刀流はものすごい能力だが、競技も全く異なる、チームもスケジュールも異なる二つのスポーツをやってのけるという二刀流も類稀な能力だ。それをやってのける選手たちが、いろいろ出てきたぐらいだから、投手と打者の二刀流ができる潜在能力を持った選手は少なからずいたのではと想像するのは無茶な想像ではないはずだ。
実はアメリカでは大学野球レベルでは現在でも二刀流はゴロゴロいる。シーズン途中で登録のメンバーの入替をあまりしないアメリカの大学リーグでは、けが人発生のリスクに備え、投手と野手両方こなせる選手は重宝される傾向にある。
でもそれがプロになると二刀流という話は影をひそめる。
なぜか。
なぜ二刀流の選手がここまで出てこなかったか、
その答えは、ただ単にマイナーの指導も一括管理するメジャーリーグ球団関係者の中で、二刀流は無理、成功しないという単なる思い込みがあったからにすぎないのではないだろうか。
「プロに行っては、投手と打者どちらかに専念するものだ」
「大学レベルなら何とかなるが、一本に集中しないと最高峰レベルのメジャーでは成功しない」
「そのメジャーに生き残るのもし烈な競争のあるマイナーから一本化して集中してやっていかないといけない」
という暗黙の了解、固定概念つまりは思い込みがアメリカ野球に深く、長らく、そして当たり前のように蔓延していたのではないだろうか
もちろん、これは、個人の見解に過ぎない。
多大なヒアリング等によるリサーチをしたわけではない。ぜひ誰かリサーチしてほしいものだが、
かなりいい線を行ってるのではと思っている。
これも思い込みで、その予想が大方はずれてない前提で話を進めるのだが。。。。
それがあながち間違ってないとすると
人間の固定観念、思い込みのパワーはそれほど凄いものなのだ。
人間のリミットを勝手に決めてしまう。
そして言われたほうも言われたままに受け入れ、自分のリミットをいわれたままに決めてしまう。
それを打ち崩すのも自分だということ。
「イノベーションは若者、馬鹿者、よそ者からはじまる」とよくいわれるが、今回の大谷選手はメジャーリーグからしたら、まさに若者、馬鹿者、よそ者の3拍子が揃っている。
弱冠23歳(=若者)の日本というよそから来た大谷選手。
馬鹿者と呼ぶのは抵抗があるが、これまでの考え方からすると、「メジャーリーグで両方やるなんでばかげている」ということになる。
日本人だからやはり日本人、日本野球をひいき目に見てしまうが、WBC2大会連続優勝の日本の最高峰のプロ野球で二刀流の実績を残したことのインパクトはそれなりに大きい。
その日本プロ野球での大谷選手の二刀流の実績が、ソーシア監督や球団関係者に、「二刀流でまずやらせてみよう」という判断まで行かせたのではないだろうか。
(もちろん、日本での結果だけでなく、サイズも含めた彼の類稀なる身体とそこから期待されるポテンシャルも大いに判断の一端を担ったかと思われるが)
仮に大谷選手が高卒からいきなりマイナーリーグに行ってたら、その時点で上記のアメリカ野球の固定概念に、ぴったりはめられ、二刀流のトライすらさせてもらえなかったかもしれない。
もちろん、日本も固定観念という意味ではアメリカとそうは変わらない。
日本でも、二刀流は高校野球まで、プロはおろか大学でも今の時代いない。二刀流が通用するほどそんなにプロは甘くない。という考えは一般的だ。
大谷選手が出るまでは、ほぼ全員とは言わないまでも、かなり多くの野球ファン、野球関係者が「プロレベルでの二刀流は難しい」と思っていたことだろう。
アメリカでそんなニュースを聞いたり見たりしたことなかったように、日本でも大谷の選手以前にはプロで二刀流の挑戦なんて漫画の世界、いや現実離れしすぎて漫画にすらなかったのでは。
ピッチャーがダメになり野手に転向という話題は多数あったが。そもそも二刀流をやろうというトライのところすら行ってなかったのではないだろうか。私自身が、野球を真剣に見るようになった、1970年代以降はプロ野球においての二刀流同時挑戦の話題は聞いた記憶がない。
その意味で、その枠を一気に超えて、チャレンジの機会を与えた栗山監督はこの歴史的なイノベーションの大の功労者だろう。
もちろん実際にやってのける大谷選手が一番すごいのだが、
栗山監督が、常識の枠を超えるビジョンを掲げ、本人をその気にさせ、日ハム球団関係者をその気にさせ、プロで二刀流ができる環境を整えてしまった。
栗山監督の二刀流のビジョンと実現の環境づくりは、日本だけでなく、世界の野球の歴史を変えるそのきっかけ、土台を作ったという点で、アメリカの野球即殿堂入りしてもいいぐらいの貢献だと大げさでなく強く感じる。
イノベーション好きなアメリカでも思い込みに陥いることもある。ということ。
そして、その思い込みというものは、いかに自分たちの限界を決めつけてしまうか。
さらに、
これまでの概念にとらわれないで、その枠を大いに超えようと失敗を恐れずチェレンジしていくこといかに大切か
さらにさらに、その既成概念を打ち破るチャレンジには、周りで支えてくれる人々の存在の大切なこと。
大谷選手のこのたった1か月の活躍はいろんなことを教えてくれた。
大谷選手の挑戦はまだまだ始まったばかり。
これかも大いに応援し、既成の枠を超える大活躍を見守っていき、大いに刺激を受けていきたい。
そして、そんな刺激を受けながら、大谷選手に負けないぐらい、自分ももっともっと既成概念をぶちこわしていかないと。