星天に瞬いて 5 | 気まぐれ図書館

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 夜闇が、エネアドの街を包み込む。日が沈んでもう何時間過ぎたことか。


 リンが寝たのを確認して、家を出たために、街はもちろんながら、向かった先も夜の静寂の中にあった。


「よぉ、待ってたぜ、ライト」


 ただ一人、自分を呼びつけた人物の部屋以外は。


「悪いな、サイス。こんな時間になっちまった」


「いや、構わねェよ。リンも、お前のこととなると(さと)いからな」


 言われ、思わず、今朝のやり取りを思い出し、苦笑した。


 普段は猪突猛進で単純なところのあるリンだが、不意に過敏な反応を見せる。


――あの一件が、あいつを臆病にさせちまったのかもな。


 今でも忘れられない。ライトが“復活”した時の、リンの表情。そして、今朝の心配げな…。


「ライト?」


 呼びかけられ、彼は我に還る。不思議そうに見つめる親友に、首を振ってみせてから、問いかけた。


「で、話って何だ? しかも、俺にだけ、って」

「今回は、俺個人じゃなく、王帝として、密命を受けてもらいたい。その為には、お前の冷静かつ的確な判断が必要なんだよ。宮廷魔導師、ライト=エヴァーラスト」

「それは、御使命いただき、誠に光栄です、サイス王帝陛下」


 言って、(うやうや)しく礼をしてみれば、サイスは不敵な笑みを見せる。


「さすがは俺の右腕だ」

「まぁな」


 サイスの言葉に、同じような表情で返すライト。だが、サイスの方は、すぐに真剣な表情になった。


「早速だが、お前、サルド家を知っているか?」

「あぁ。王家の血筋の貴族だろ? 確か、三日前、一人娘が亡くなったっていう」


 言いながら、ライトは、昨晩のミラージュの言葉を思い出す。そういえば、サルド家のお嬢様の名前はレヴィエンス。その愛称が、レヴィーなのだろう。


 そんなことをうすぼんやりと考えていると、


「その、一人娘が、いなくなった」

「ッ…!?」


 聞かされ、思わず、ライトは息を呑んだ。そして、続く、サイスの言葉に。


「正確には、遺体がなくなった、だがな」


 淡々と告げられ、ライトは自分のことを重ねる。

 自分が、神子と呼ばれるようになった、あの日のことを。


「まさか、とは思うが“再臨(アセト)”が関係してるんじゃねェだろうな?」


 思わず、あり得ないはずのことを口にして、ライトはすぐに、違う、と否定した。それは、サイスも理解しているようだ。


「俺が危惧しているのは“狂気(ノア)”の方だ。けど、リンに知らせなかったのは…」

「リンに、あの時のことを思い出させたくなかったから、と、リンの“再臨”が狙われている、ってとこか?」


 聞いてみれば、サイスはすぐに頷く。確かに、この話、リンにはまだ酷だろう。


「わかった。俺が、出来る限り調べておく」


 そう言って、踵を返したライトだったが、


「また、一人で抱え込むなよ?」


 後ろからかけられた、優しい声。それは、王帝としてではなく、一人の友としてのものだった。


「心配するな。俺を、誰だと思ってる?」

「傲慢」

「知ってるっつーの」

 そう言って、左手を高く上げてみせると、ライトは王帝の私室を後にした。