王子様とお姫様。 8 | 気まぐれ図書館

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 夜。


 しんと静まり返った時間の中、それは、俺はベッドの上にいた。


 すっかり普通の生活に馴染んだ姫が、俺の行動に気付いた素振りはない。


 だが、最近の姫を見ていると、いつ気付かれてもおかしくないような気がした。


 前に、読んだ本のことを思い出す。

 きっと、姫は、あれを自分と重ねたに違いない。あのストーリーは、ある意味、彼女の…、いや、俺達の昔のことを思い起こさせる。


「……」


 だが、姫には過去でも、俺にはまだ過去ではない。現在進行形で続いていること。


「時間、か…」


 独りごち、ようやく体を起こす。


 姫には言っていない方の「仕事」の時間。それは、ほぼ毎夜、続いていた。


 気付かれないようにドアを開け、静かに部屋を抜け出す。それも、いつものこと。

 そう、毎晩繰り返されることと、同じこと、だった。


「……」


 不意に聞こえた、物音。


 それは、こんな静かな夜でなければ聞き逃していたかもしれない。

 だが、確かに聞こえたそれは、姫の部屋からだった。


 もしかして、気付かれたのか?


 だが、それはそれで、構いはしない。頭の中を「ピリオド」の四文字が通過する。


 そんなことを考えながら、俺は、そっと玄関の扉をくぐり抜けた。


 夜闇を歩くことには慣れている。昼とほぼ同じ明るさで見ることができるのは、培ってきた俺の特技。

 だが、それは同時に、姫の特技でもある。


 案の定、と言うべきか、彼女はかなり離れた距離で俺の後をついてきていた。


 気が付いていない、と思っているのだろうか?


 そんなことを考えながらも、真っ直ぐに歩き続ける俺。

 後ろから、様子をうかがいながらついてくる姫。


 彼女は、そう易々と俺を見逃したりはしないだろう。つまり、俺の出かけた理由がはっきりするか、彼女が納得するかしない限り、このイタチごっこは終わらない。


 ならば、いっそ…。


 足を止めて、そんなことを考える。


 と同時に、姫も足を止めた。さすが、と言うべきか、つけられている余韻は残さない。

 どれだけの間そうしていたか、また、歩き出せば、姫も同じように歩き出す。


 どうしたい? 俺は。


 そんな自問を繰り返していた時、


「ッ…!」


 背後から、ドサリ、と、何かが崩れ落ちるような音がした。


 姫に何かあった。


 直感で、そう感じた俺は、思わず踵を返そうとする。


 だが、


「このような場所に来ることは、あまり感心しませんね?」


 不意に、首筋に突き付けられた銃口。思わず、舌打ちする前に、女が言葉を発した。


「一緒に来なさい。貴方が、姫、と呼ぶ、彼女の身を保障して欲しいなら」

「…断る」


 きっぱりと言い放てば、後ろから聞こえるため息。


「そうですか」


 ガチャリ、と、セーフティの外す音が聞こえる。脳内に響く銃声。


 そこで、俺の意識は途切れた。