王子様とお姫様。 7 | 気まぐれ図書館

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「う~」

「いやぁ、悪いなぁ、女の子にこんなことさせて」

「そう思うんなら負けてよ」


 恨めしそうに睨む姫に、俺はわざと明るく笑った。


 今日は、アレウッドの街への買い物の日。

 いつも通り、食べ物を買って、生活用品を買って、家に戻る。


 ただし、今日は、昨日の約束通り、チェスに負けた姫が荷物持ちをすることになっていた。


 俺なら、ああ言えば、きっと負けてくれる。そう思っていた様子の姫だったが、その考えは甘い。


 俺は、勝負事には容赦をしないのだから。そう、仕込まれてきたのだから。


 それにしても。


 横目で、ちらりと姫を見やる。


 俺達の一週間の生活は、同居を始めてからほとんど変わっていない。


 まず、買い出しに出る日、それが、週に1回。

 そして、俺が仕事に行くのも、週1回。

 あとの五日は、家でいろんな遊びをして過ごしたり、一緒に料理をしたり、絵を描いたり、お互い、平凡な日々を過ごしている。


 姫が、いつしか、違う意味で俺のことを気にしているのにも気付いていた。だが、詮索無用のルールがある以上、お互い、その一線は超えない。


 俺は、食材をあれこれと見ているフリをして、そんなことを頭の隅で考える。それと、同時に思う。


 そろそろ、潮時か。


 彼女が、俺のことを知りたいと思った時点で、この生活は即終了。


 それをわかっていて聞いてきたとしたら、その時は…。


「王子?」


 聞かれ、すぐに笑って、何でもない、と答える。


 知る必要の、ないこと。少なくとも、今の生活には。


「姫、今日はハンバーグにしようか? それとも、魚料理の方が良いかな?」

「う~ん、どっちも捨てがたい…」

「欲張りだなぁ、姫は。太るよ?」

「う、うっさい!」


 他愛もない会話。そんな中で、きっと、姫は俺を探っているのだろう。わかる情報など、せいぜいしれているが。


 だが、


「そういえば、王子って黒い服多いよね」

「何だよ、急に」


 不意に姫がそんなことを言いだして、ドキリとした。思えば、服装に関して指摘されるのは、これが初めてかもしれない。


「そういう姫こそ、多いじゃないか、黒」

「まぁ、そうだけど…」


 これもまた、初めての指摘。同時に、聞くなと暗に言ったつもりだが。


 確かに、俺が黒い服を好むのは理由がある。だが、それは、俺の過去に関わることだから言えない。だって、お互いそうだろ? 知られたくないのは。


 そう思ったが、言葉にできなかった。今は、してはいけない。


「どうかした?姫」

「うぅん、何でもないよ」

「最近、そればっかりだな」


 苦笑してみせれば、姫も思わず苦笑した。


 らしくない、ぎこちない笑い方。


「さぁ、買い物済ませて、早く家に帰ろう? お腹空いちゃった」

「ほんとに、姫は変わり身早いな」


 さっさと話題転換をしてしまう姫に、俺は思わず笑ってしまう。それには、姫も安心したようだった。

 いつもの生活。


 彼女が望むものは、それだけのはずなのに…。