ご馳走はなんにしようか


家に帰るよと電話するたび


母が嬉しそうに聞いてくる


「お母さんのご飯はなんでもおいしいけど


茶碗蒸しが食べたいな」


そういうと母は


「お安い御用よ」


まだ他には?と言いたげな口調で


弾んだ声を受話器越しに響かせる


一つ一つ丁寧に手をかけた具を


柔らかめの卵のふるふるで包み込んだ


母の特製茶碗蒸し


これよりおいしい茶碗蒸しはどこのお店でも食べたことない


母の元に帰るたび


笑顔と特製の茶碗蒸しが私を出迎える


いつまでも幸せな子どもでいられる私は


その愛をどうやって返したらいいのだろう