今年はどんな本を読みましょうか。
候補1冊目。
今にも動き出しそうな馬の絵を描きたい、と願って馬の絵ばかりを描きつづけた少年ハン・ガン。
やがてハン・ガンの描く馬は、そのあまりの見事さに、「絵からとび出す」という評判が流れ始めます。
ある晩、ひとりの武将がハン・ガンを訪れ、
「わしのために、この世で一番気性が激しく、勇敢で、力の強い馬を一頭、描いてくれないか」
と頼みました。
ハン・ガンが描いた馬は、絵から猛然と飛び出します。
武将がその馬に飛び乗るや、馬は水も飲まず、飼葉も食べず、休むことさえなく、戦場を闘いぬき。
どんな激しい戦でも、かすり傷ひとつ負うことなく、武将は次々と大勝利を収めていきます。
しかし、馬は悲しくなりました。
切り落とされた人の首や腕、傷ついた馬、殺された馬…。
目から大粒の涙があふれたかと思うと、武将を戦場のまっただ中で振り落とし、血まみれのまま走り出しました。
この馬を、いったい誰が止められるでしょう。
必死になって馬を探し、見つけらなかった武将が、ハン・ガンの元へ再びやってくると。
馬は、ハン・ガンが描いた絵の中に、血まみれのまま、入っていた、ということです。
勇敢で力強い、立派な馬を描くより、もっと難しい、心を持った馬を描いた、という話でしょうか。
ハン・ガンは、今から1200年以上前、中国に実在した画家で、特に素晴らしい馬の絵で知られていたそうです。