凸版
活版印刷(活字や写真凸版・線画凸版、罫線などを組み合わせて版とする)はこの版式である。印刷時での圧力により紙に凹凸ができることがある。ま た、印刷された文字にマージナルゾーン(インクの横漏れにより、実際の活字の線幅以上の余分な太さとなる部分)が見られるなどの特徴がある。版が鉛製で取 り扱いにくいこと、オフセット印刷の発達などにより、活版印刷は廃れた。現在主に行われている凸版印刷は、樹脂凸版印刷 およびフレキソ 印刷である。樹脂凸版印刷とは、活版の代わりに感光性樹脂を刷版に用いるもので、週刊誌のモノクロページ、 シール、ラベル印刷などで使用されている。ただし現在では、週刊誌のモノクロページはほとんど平版オフセットで印刷されるようになった。フレキソ印刷は、 ゴムや感光性樹脂の版を用い、刷版にインキを供給する部分にアニロックスロールと呼ばれるローラーを用いる方法である。アニロックスロールは、表面に規則 正しい配列で凹みを彫刻し、その凹部に詰まったインキを版に供給するもので、用途に合わせて凹部の線数を選択することができる。印圧がほとんどない「キス タッチ」が理想とされ、段ボールライナー、包装フィルムなどの印刷に使用されている。
印刷年表
- 1896 年 、小川一真 が日本初の3色版 印刷を発表。
- 1918 年 、築地活版製造所 が邦文活字の鋳造を開始。
- 1919 年 、HBプロセス法 が日本に移入される 。
- 1924 年 、石井茂吉 と森澤信夫 が邦文写真植字機 の試作機を発表
- 1960 年 、電子製版機 (カラースキャナ )が実用化
- 1970年代 、国産4色同時分解スキャナ 開発。この頃から電算写植 、オフセット印刷 が主流となる。
- 1985 年 、アメリカでDTP が 始まる。
- 1989 年 、日本初のフルDTP出版物『森の書物 』が刊行。この頃からデータのデジタル 化が加速。オンデマンド印刷 、電子出版 などが徐々に現実となり始める。
印刷の歴史
東アジア では、2世紀 頃 に中国 で 紙が発明され、7世紀 頃には木版印刷 が行なわれていたといわれ、また11 世紀 には陶器による活字 を使った印刷が行なわれていた。金属活字による印刷は13 ~14 世紀 の朝鮮 (高麗 ) にあらわれている。現存する印刷物で、製作年代がはっきりと判明している世界最古のものとして、日本 の 「百万塔陀羅尼 」がある。
ヨーロッパ では、1450年 頃 のヨハネス・グーテンベルク による金属活字を用いた活版印刷 技術の発明で、印刷が急速に広まった。グーテンベルクの発明から1500年 以 前までに印刷された書物はインキュナブラ (揺籃期本 、初期刊本 )と呼ばれ、どれも貴重書であるため莫大な古書価がつくことも ままある。当時の印刷物は、聖書 を始めとする宗教書 が半数近くを占めており、活版印刷による聖書の普及は、マルティン・ルター らによる宗教改革 につながっていく。
その後、欧米においては長らく活版による文字、凹版 による絵画、挿絵の印刷が行われた。
1798 年 にドイツのセネフェルダー が石版印刷 (リトグラフ )を発明。これが平版印刷 の始めとなる。現在主流となっている平版オフセット印刷 は、1904年 に アメリカのルーベル が発明したといわれているが、それ以前にイギリスではブリキ 印刷の分野で使用されていた。ルーベルの発明は紙への平版オフセット印刷である。
日本では、「百万塔陀羅尼」が作成されて以降二百数十年間、印刷物が出されることはなかったが、平安時代 中期になって、摺経供養が盛んに行われるようになった。これが、奈良を中心とする寺院の間に、出版事業を興 させるようになる。興福寺 などで開版した印刷物を春日版 と呼ぶ。鎌倉時代 には高野山金剛峰寺 でも出版を行うようになった。これは高野版 と呼ばれる。13世紀頃からは、宋 へ留学した僧がもたらし た宋刊版の影響を受け、京都で五山版が出る。安土桃山時代 になると、宣教師に日本語 を学ばせるため、初めて活字による印刷(キリシタン版 )が行われ出す。近世 以 前は金属活字を用いたキリシタン版や駿河版 といった例外を除き、木版印刷 が中心だった。江戸時代 初期から中期にかけて、美麗な嵯峨本 を始め、庶民の読み物である赤本 や黄表紙 など、一気に出版 文 化が花開くことになる。これらには、木活字 もしくは木版を用いた整版 が使われた。
木版以外では、1783年 に司馬江漢 が腐食による彫刻銅版画 を製作している。1856年 に は長崎奉行所内で活版による近代 洋式印刷が始まる。
明 治 時代に入り、1870年 には本木昌造 が長崎に新町活版所を創立、これが日本における民間初の洋式活版の企業化である。1888年 に は合田清 が木口木版 (西洋木版 )を日本に初めて紹介した。なお、日本初の印刷専門誌『印刷雑誌 』の創刊号(1891年 ) の表紙には、合田清の木口木版画が使われている。