「それでね、その後警察がね、、、」ペチャクチャ
ドッドッドッ、、、
誰かが階段を上がってくる音がした。
「でね、、、」ペチャクチャ、、
「んっ?!!!」
!!!!!!
「ごご、ご、ご、ごめん!志村帰ってきた!!!また後で電話するわ!!!」(超早口&小声)
「う、うん!」
大慌てで次女の携帯を切るのとほぼ同時に志村が部屋に入ってきた。
土足で。
わ、土足.....
いつからアメリカン土足方式に....
そのまま私の所までやって来て至近距離で顔面近づけて半笑いで、日本語で、
「よぉ、だぁれとお話ししてたのかなぁ~?」
「べ、別に関係ないじゃん」
やべぇ.....聞かれた。
絶対にこれ渡す訳にはいかない。
Kee君を売ることだけは出来ない。
何がなんでも携帯渡す訳にはいかない。
でも、どうしよう、どうしよう!
ぴ、ぴーんち!!!(何回目だよ!)
志村「おら、よこせよ、その電話」
私「無理」
志村「貸してみろよ、おら。誰と話してんだよ?また後でとか言ってたなぁ?ああ?」
私「嫌です。渡しません」
志村「またぶっ壊されたいのか?ああん?」
私「無理です。てかもう、なんなの!?なんで土足なの?」
志村「はぁ~?うるせぇよ、かんけぇねぇだろ?」
私「何しに来たの!?あっち行ってよ!!」
そう言って近くにいたチビをぎゅーっと抱きしめた。ちびを抱いていれば手は出せまい。
志村「んで、誰と電話してたんだよ」
私「、、、、」
志村「よこせよ、ほら」
私「、、、お、、、お、、、」
私「親と電話してたの。」
「おかーさんと、、、」
志村「.......」
志村「チッ」
そう言うと私から携帯を奪うのを諦めた。
志村「で?決心したのぉ~?」
私「な、何が」
志村「離婚だよ。り・こ・ん」
私「はい。もちろん。」
すると志村は再び1階に降りていった。(土足で)
そのまま直ぐに紙とペンを持って戻ってきた。(土足で)
そしてA4のコピー用紙を床に置いて言った。
志村「ここに、私から離婚したいと切り出しました。私が言い出しっぺですって書けよ、おら。」
私「.......」
アホな私は、え?これは私が不利になるの?とか思って返事すらできず。
志村「おら、早く書けよ!」
とりあえず、どーしよう???
私「あ、後で書いておきます。」
志村「チッ、で、ほんとに離婚すんの?ねえ?」
私「はい、もう無理なので」
志村「チッ」
そして再びフラフラと歩き出した。(土足で)
志村「あ、お前の携帯どこだよ?」
私「は?」
すると志村はハイスペックPCの脇にあった私のバッキバキ携帯を見つけてそれを手に取って下に降りていった。
え、なになに?今更なによ?
とか思ってチビを下ろし、オモチャを渡して急いで階段を駆け下りた。
志村はそのまま真っ直ぐ玄関を出て、家の前にあるマンホールの小さな穴にバッキバキ携帯のSIMカードを抜き取るとポトンと捨てた。
あ、、、次女のSIMカードが.........
志村「あっら〜、残念~、落ちちゃった~」笑
「お前の持ってる証拠消えちゃった~」笑
「........」
許せない......
殺意が湧いた。
私は咄嗟に志村の背中に飛びついた。そのまま首に腕を回してしがみつきながら志村の横っ面をグーで殴った。何回も殴った。力いっぱい殴った。
人生で生まれて初めて人を殴った・・・。
志村は私を振り払いながら部屋に戻った。
人でなし、人でなし。
あいつは人間じゃない....
チビが私を探して階段を降りて来るのが見えた。
私はチビを抱き上げてサッとリビングに入った。
その時ちょうど家の前に一台の車が入って来るのが見えた。
すると志村はそれを知っていたかのようにさっさと家から出ていく。
どうやら仕事関係の来客の様だ。
奴は何かを受け取るために一旦帰宅してきたんだ。そっと窓から様子を見る。
まだ少し時間がかかりそう。
私はチビをソファーに置いて
「ちょっと待っててね」と小声で言うと、靴も履かずに急いで外に出た。
志村はお客さんの車の向こう側でこちらに背を向けてお客さんと話し込んでいる。
こちらには気づいていない。
私は急いで玄関前に横付けした志村の車の助手席のドアを開けた。車の鍵は開いていた。
車の運転席の脇のボックスの上には、志村のガラケーとiPhoneが充電器に刺さった状態で置いてあった。
私は充電器から引きちぎるように2台の携帯電話を取って車のドアも閉めずに急いで走ってリビングに戻った。
戻りながらポケットに隠し持っていた針金をiPhoneの穴に差し込んでSIMカードだけを抜き取り、ケースは元に戻し、ガラケーと一緒にリビングのウォーターサーバーの影に隠した。
隠し場所なんてどこでも良かった。
そのままチビを抱っこして2階に行こうとした時、志村が鬼の形相で戻ってきて私の腕をグイッと掴んだ。
「おい、てめえ、ふざけんな、俺の携帯返せよ!!!」
私は無視してチビを抱いて階段を上がっていく。
案の定、志村は携帯を私が持っていると思ってポケットや身体を探りながら着いてきた。
もちろん想定内。
「おい、てめえ、、、」
私「一体、何のことですか?」
私は冷たい目で志村を見た。
死ねばいいのにって思ってる事が伝わるような目で。
志村「おい、どこにやったんだよ、頼むよ」
私「さあ?何のことですか?」
志村「じゃあさ、iPhoneはいらねーからせめてガラケーだけ返してよ」
私「さあ?何を言ってるのかサッパリ?」
志村「おいー、、、仕事で必要なんだよ...」
このバカは自宅の電話から自分の携帯を鳴らす事すら考えつかないのか。早く気づけよ。クズ。そしてさっさと消えろカス。そのまま事故って死ね。
私「.........」
少しして、心の声が聞こえたのか、志村はハッとなって1階のリビングに行き、それを試した。
2階の部屋にまで、ガラケーがフローリングの上でブーッブーッっと振動する音が聞こえてきた。
志村はウォーターサーバーの脇から2台の携帯を見つけると、そのまま車に乗って出ていった。
壮絶。