私は慌ててKee君に電話した。
「なんか、今、LINEで迎えに来るなって、それと、地図の履歴見たらもう幕の内弁当駅から移動してる!!!」
「えぇっ!」
「どうしよう、、、」
「それで、LINEに返事はしたの?」
「ううん、まだ....でも、既読は付けた....」
「そっかぁ~....でも、もしかしたら本当に何かの事情があるのかもしれないよ?」
「そんなことないでしょ.....」
だって、だって、、、
志村は前夜に、既にこれを計画していたんだよね。
だから前夜にKee君にこんな事を言ったんだよね....?
私はそこにある志村の計画性を感じてなんとも言えない気持ちだった。
それはまるで夫が中心の輪の中で、仲間を集めて私だけを仲間はずれにするような、小学校時代に味わったあの嫌なイジメの感覚に似ていた。
「所でさ、今、パパはどこに行っちゃってるの?」
「まだ良く分かんないの....」
「えっ、どうゆーこと?」
「いやぁ、GPSじゃないから、リアルタイムじゃないんだよね...これ....」
「な、なるほど....」
「ど、どうしよう.....」
「どうするの?」
......どうするの?
んーん、悩むまでもない。
私の気持ちはとっくに決まっていた。
私は今日9時に夫を迎えに行くために、家事をきちんと終わらせたんだ。
夕飯の準備もできた。
子供たちにも夜に家を空ける理由をきちんと説明した。
子供たちも不安で押しつぶされそうになりながら一生懸命歯を食いしばって私たちの事を信じてくれてる。
みんな不安だったこの1ヶ月を、子供たちに助けられながら、迷惑をかけながら、自分の意思でここまで頑張ってきたんだ。
私は夫と約束したんだ。
夫も私と約束したんだ。
あのバーに行くんだと。
2人で新しくやり直すんだって。
それは今日じゃなきゃダメなんだ。
「行くよ。」
「Meちゃん、決めてたんだね」
「うん。私は志村と9時にガストで落ち合うって約束したんだもん。」
「よし!それなら俺もここまで関わってきたんだから最後まで付き合うよ!!!」
「Kee君!!!ありがとう~!!!」
「それでね、今回の話なんだけど、さすがにミホちゃん(嫁)に話しちゃっても大丈夫?」
「勿論!もうKee君にはとことんお世話になりっぱなしで、さんざん迷惑かけたし、ミホちゃんにもきっちり謝らせて下さい。」
ミホちゃんはずっと嫌だっただろうなぁ....
私は自分のことしか考えてなかったよね。
もしもKee君が不倫しててミホちゃんが朝から晩まで志村に頼ってきたら私なら嫌だろうな。
ミホちゃんはすごく冷静で、すごく姉御肌で仕事もフルタイムでバリバリこなす、私とは正反対の素敵な女性。きっとたくさん嫌な気持ちになって、でも、我慢してくれてたんだろうな。
すごく信頼し合ってるんだね。
羨ましいよ。
私はKee君やみほちゃんに本当に申し訳ない気持ちでいっぱいになった。
「ミホちゃんは大丈夫だよ!よそ様のおうちの事にあまり首突っ込み過ぎないでね~ってちょっと怒られちゃったけど、分かってくれてるよ!」
「す、すいません、、、」
「さて、じゃあ、行きますか。」
そうしてKee君は車で迎えに来てくれました。
「あ、そうだ、ちょっと仕事の用事で街に行かなきゃ行けないんだけど、先に寄ってもいい?」
「うん、勿論!」
そしてしばらくして街に近づいた頃、
「そう言えば、パパはその後何処にいるか見たの?」
「あ、どこかなぁ?」
そう言ってGoogleマップをチェックした。
「Kee君!!!」
「どーしたー?」
「志村、Googleマップだと2本隣の通りにいる事になってるんだけど....」
どーすんだこれーーーー!!!!