さよなら。 | 忘れな草を忘れないために。

さよなら。

連休中、
先輩から食堂のお爺さんがなくなったとメールが入った。


まさか、と、やっぱりが入り乱れた。




私の勤務先は少人数ながら食堂がある。

少人数だから、メニューは一種類。
少人数だから、働いているのは、そのお爺さんとパートさんと二人きり。


貧しい日本を経験している世代だからか。
肉体労働の人もいるからか。
何時でも満腹メニューで、
お新香もカレーも何もかも手作りだった。


夏は冷やし中華
冬は鍋やらおでんやら。


鏡開きには、お汁粉。
冬至は、南瓜。
ひなまつりは、ちらし寿司。
入社式は、尾頭付き。
クリスマスは、鳥もも。


納涼会や食堂で飲み会があれば、
綺麗に盛り付けられたオードブルが用意された。

ひとりひとりの好き嫌いも、ちゃんと知ってくれていた。


たまに味が濃いな、とか
この組み合わせは、ボリュームがありすぎて、
とか思うこともあった。


だから、休職あけはお弁当を母に作ってもらっていた。

でも程なくして
あの温かい
メニューが恋しくて食堂で食べるようになった。



そうしておいて良かった。



お別れをしに行き
通夜ぶるまいをいただいていたら
先輩が
「こういうお料理、何時も作ってくれたのに」
ポソリと言った。



色々あってもいい会社だと思うひとつに
その食堂の存在があった。



1ヶ月前まで食堂に来てくれていた。
その使命感に私たちは気づかず
きっと復帰出来ると信じて、願っていた。


今思えば、相当苦しかったはず。


最後まで有難うございました。
安らかにお眠り下さい。



棺の前で手を合わせたけれど。
生きている時にお礼を言いたかった。