Aさんには彼女がいた。

仲良くなってからも、私はずっと知らなくて、その事も同僚に聞いたのがきっかけだった。

彼女いるんだろうなぁとは心のどこかで思っていたけど、本当にいるという事を知った私の気持ちは複雑なものだった。

それは、嫉妬だったのかもしれない。

恋ではないけど…

宝物をとられたくないような…。

兄妹愛みたいな?








いつものように私の残業にAさんは付き合ってくれた。

『先に帰ってもいいよ』と言っても絶対に最後まで居てくれて、おまけに『夜道は危ない』と家まで送ってくれた。

『こんなにいい人だからやっぱり彼女いるんだろうなぁ…。なんで隠してるんだろ?』
と考えると、
どうしても気になって仕事も進まないので聞いてみることにした。

あい「Aさんて彼女いるでしょ?」

A「いないって。(笑)」

あい「嘘だぁ!知ってるんだから。」

A「……。」

あい「白状したほうが楽になるぞヾ(・ε・。)」

A「バレちゃったなら仕方ないか。(-_-;)」

あい「なんで黙ってたの?」

A「言いたくなかったから。…ていうか言う必要ないかと。」

あい「言いたくなかったなら仕方ないけど…。彼女いるなら私に付き合ってないで、早く帰ったほうがいいよ。私に優しくしたって何にも良いことないから。( ̄▽ ̄;)」

A「もういいんだ。」

あい「はい?何が?」

A「彼女浮気してるんだ…。だからもういい。」

あい「Σ( ̄◇ ̄*)エェッ 諦めちゃっていいの!? 彼女のこと好きなんじゃないの?」

A「俺が悪いんだ…。仕事ばかりで全然構ってやれなかったから。 最低だよな。父親みたいに仕事人間になりたくないって思ってたのに…。」

あい「Aさん…。」

何も言ってあげられなかった。

ただいつもAさんにされるように優しく頭をなでただけだった。

震えながら泣くAさんは子供の様で、いつも優しく諭してくれる『お兄ちゃん』はそこにはいなかった。











Aさんには計り知れないほどの心の闇があるのかもしれない。

私はそう感じた。

これは私の憶測だが、
彼女を失った悲しさ以上に、父親のようにはならないと心に決めていた自分が、結局同じ人間になっていたことが許せなかったのではないだろうか。