ジージーゼミは暑苦しい
ツクツクボウシはせわしない
ミンミンゼミはやかましい
ニイニイゼミは気忙しい
セミで良いのは山で一声 ヒグラシの声
ヒグラシが鳴く山深い谷間、 前世のどこかで、私は誰かと心中したのだと思う
柘植の櫛を髪に飾った、無口な娘だったと思う
(私は 汗で張り付くおくれ毛を気にしながら、
杖にとまった赤トンボの 夕日に輝く宝石のような羽を見ていた。
その時 あの人が何か言ったから、
私は振り向いてにっこりして きれい<しあわせ>と 応えた)
透きとおるようなヒグラシのこえと むせ返る草木のにおい
夏の終わりの頃のことだった
