(6)
僕は考えた。
あの女性が…敵本人だったという可能性はないだろうか。
はじめからずっと、あの寿司屋に来た一団に紛れこんでいた…
としたら、どうなるだろう。
院長を地上から操っていると見せかけて、
自身も地下にいたとしたら。
ことの成り行きを
実は一番近くで見守っていた、としたら。
何か想定外のことが起きたとしても、
的確な対処ができるはずだ。
そして実際、はなみは寿司屋にいた。
それは相手にとってみれば想定していない事態だったはずだ。
相手の目的ははなみの身柄を手に入れること。
思いもしない展開で、それが果たされた。
あとは…いかにはなみを連れて、この場所を脱出するか。
その為には…
はなみに、みずきに、僕に…
自分が味方だと思わせればいい。
はなみが襲われ、それをあえて助けて見せることで、僕たちを信用させる。
僕に地上へ行くよう言ったのは、隔離するためだ。
邪魔者を取り除くためだ。
そしてエレベーターに入ったタイミングで停電を起こさせ、閉じ込める。
後ははなみを連れ、逃げるだけ。
相手の狙いは初めからはなみ一人。
停電によって奪われる命など…
病院内の人間など、どうなっても構わないのだ。
そう考えると、全てのつじつまが合う。
ような気がする。
なんてことだ。
完全にはめられた。
なぜ、あんなに簡単に指示に従ってしまったのか。
彼女を疑わなかったのか。
僕は後悔した。
その時だ。
エレベーターのドアが開いた。
というか、外側から何らかの力で無理やりこじ開けられた。
「なーに、やってんの」
そこに立っていたのは、
はなみ、みずき、それから…例の女性だった。
「あんたが遅いから、追いついちゃったじゃんかよ」
女が僕を見下ろすようにして言った。
彼女の電気スタンドが辺りを照らす。
長いまつ毛に囲まれた黒い瞳が、
冷ややかな視線を投げた。
「え、ど、どういうこと…?」