(5)
僕は寿司屋グーテンタークを後に、走った。
地上へ向かうエレベーターへ向かって、走った。
「駄目です、今、病院内のたくさんの人の命が危険にさらされている。
きちんと話をつけないと…」
地上へ行け、という謎の女性の言葉に僕は反論した。
しかし彼女は言った。
「そんなこと、心配しなくていい。
もし本当に全ての人を助けたいと思うなら…早く行け。
そして、敵をたたけ」
僕は半ば押し出されるように寿司屋を後にした。
さっきまでの交渉はどうなるんだろう?
はなみと引き換えの人質の命はどうなるんだろう?
不安が頭をよぎったけれど、
あの人にはきっと何かの作戦があるのだ。
彼女が何者なのか?
組織とはどういう関係なのか?
いろいろ気になることはあったけれど、
僕はひとまず言われるままに地上を目指した。
エレベーターと寿司屋の間にあるいくつもの扉は、
全てロックが解除されていた。
国家の重要機密を守るセキュリティと
田中院長は言っていたけれど…
これからは、そういう重要なことは
この病院で扱わない方がいいんじゃないかな。
そんなことを思った。
そして、僕はエレベーターにたどり着いた。
扉が開き、中に入る。
その瞬間。
突然、目の前が真っ暗になった。
「うわ、な、なんだ…?!」
すぐに僕は何が起きたかを理解した。
そして絶望した。
停電だ。
病院内の電源が、落とされたのだ。
エレベーターはもちろん動かない。
相手が、ついにカードを切った。
たくさんの入院患者が苦しむ姿が浮かんだ。
普通なら予備電源に切り替わるのだろうけれど、
恐らくそういったシステムもろもろも
相手の手の内に掌握されているだろう。
やはり、きちんと交渉するべきだった。
相手と話し合うべきだったのだ。
激しい後悔が僕を襲った。
……。
待てよ。
もしかして…。
ある考えが、僕の頭をよぎった。