(5)





ヤマトは組織の中では下っ端だったのか。

まあ確かに、人格的に幹部っぽくはない。



「おかげで俺がこうして迎えに出向くはめになった。

 分かっているのかな、まったく」



院長(の身体)はブツブツとつぶやいた。

ヤマトはうつむいたまま小さくなっている。

高みの見物を決め込んでいたようだったけど、

あっさり態度が変わってしまった。



しかし、少なくとも一つの目的は

やはりヤマトを救出することだったらしい。



だとしても、人質を取るということは

目的がもっと他にあるということだ。



「さて…天野、ハルキくん… だったね。

 君、今けっこう有名人だよ。

 こっちの世界では」



院長はまた僕に向き直った。



「まず、そもそもだ。

 その歳まで、普通の人間の世界で生きてこられた。

 それだけで奇跡のようなものだ」



え……そうなのか。



「俺たちアマテラスの使者は…

 生まれてすぐ、あるいは幼少期に…

 同じ力を持った使者によって見出され、育てられる。



 元の家族や産みの親は、

 その時点で子に対しての記憶を抹消され

 何もなかったかのように忘れ去る。



 そうしてアマテラスの使者の存在は

 けして公になることはなく

 世界は回っていく。



 それが、あるべき姿なんだ。
 
 それなのに、君は17年間も

 元の家族と共に過ごし、成長してきた。



 なぜ我々の眼が行き届かなかったのか?

 それだけでも、こっちの世界では大ニュースなのだ」



ヤマトははなみを殺そうとした時、

はなみが消えれば他の人の中にある

彼女に関する記憶も全て消える、と言っていた。



同じようにアマテラスの使者として生まれた者も、

誰の記憶にも残らず、

この世界には存在しない人間として生きているというのか。



そこまでして存在を守り、

育てなければならないほど

アマテラスの使者とは意味のあるものなのか。



「なぜ…そんなにまでするんだ。

 そうまでして、戦うような相手なのか。

 闇の勢力と戦うことは、

 そんなに意味があることなのか」



「その質問には答えてあげよう。



 答えはイエス。

 イエス、イエス!!

 イエス、イエス、イエス!!!」



院長が腰を曲げ、顔を僕のギリギリまで近づけて言った。

鼻息が僕の額に触れた。



「答えはイエスだ。

 もし我々の存在がなければ、

 人類は過去に十数回は滅んでいることになる。

 その脅威を常に退けてきたのが我々だ。

 君たちの知る歴史上の人物にも、

 闇の化身だった者、アマテラスの力を持った者が多くいる。

 単に、それとは認識されていないだけでね。



 その影の歴史を記憶し…現代、そして未来へと

 この叡知を受け継ぐためにあるのが…

 超世界的組織『全国電気スタンド組合』。

 Z・D・K。

 ズィー・ディー・ケイだ」




 
彼は誇らしげに語った。





(つづく)