バロック・ギターやキタローネなど撥弦楽器を弾いていると,楽器の調整の話がどうしても多くなってしまって,そういうことに触れていない読み手の方をきっと遠ざけてしまっているだろうなぁ…と薄々感じつつも,苦闘の記録として書かざるを得ない。

 

リコーダーだと製作家の方でない限り自分で調整できる範囲は限られているし,それでもブロック外したりする方はおられるけど自分としては恐ろしくてとてもできないし,曲のことや技術のことだけにある程度専念して書ける。

 

撥弦楽器は,それ以前に弦などの楽器が整っていないと,気兼ねなく弾くということすらできなくなってしまうので,楽器によって演奏に至るプロセスが違うことをつくづく思う。

 

さて,今日は,意を決して,というかようやく時間が取れたので,フレットガット総取り換えを実施。

とはいえ,いくつかは以前替えたものをそのまま使う。

 

この期間にやっておきたかったし,欧州に頼むとクリスマスシーズンで年明けになりかねないから,国内で在庫がある方に打診をして取り寄せる。

1つ在庫がなくて別の方から取り寄せるが,結局使わなかった。

 

特に低い音のフレットはいくつかゲージを試してみて,いきなり決めてしまうのではなくて,一番良さそうなものを決める。

1〜2フレット上で縛っておいて数時間放置。

そして不要な部分を焼き切って,定位置に移動。

1つあまりにも縛ったところに近くて焼き切ってしまって巻き直し(泣)。

 

ゲージをフレットごとに音を出して確かめながら張ったので,ほぼ満足な結果に。

5コースが若干ビリ付き気味だったけど,弾いているうちに落ち着いてきた。

 

先日の講習会合宿で,楽器自体がちょっと逆ぞり気味と言われて実際そうだったので,少しピッチを上げて順ぞり気味にする。

5コースだけあまりうまくいっていないから,何とかしなくては。


ただ,1コースをガットにしたのは良いけど,詰まった音になってしまう。

ガット弦を替えてもダメだし,ナットの溝の滑りを良くする調整をしてみてもダメ。

もしかして…と思って,元のナイルガットにしてみたら,全く問題なく美しく鳴る。

 

1コースは,メロディを多く弾く弦だし,特にメロディアスなラスゲアードでは1コースでメロディを奏でるから,ちゃんと鳴らないとどうにもならないので,バランスは多少違うとはいえナイルガットでしばらく弾いてみよう。

 

ということで,こうして張り直した後で練習してみると,ようやく安心して弾ける感じに。

この写真の状態とはかなり変わった。

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キタローネももちろん。

Kapsbergerのアルペッジョとanonのサラバンド,そして通奏低音の練習でLullyの和音付けと跳躍の難しい箇所,そして知己のリコーダーさんから

「通奏低音始めたらやって」

と言われているMarcelloのチャッコーナ入りのソナタの通奏低音を。

和音は全体的にはまだ無理なので,基本的にはベースラインだけを。

 

自分でも練習で何度か吹いた曲だけど,通奏低音の立場から見ると,音楽の見え方がまた違って面白い。

通奏低音はこういう風に行きたいんだなというのを知ることは本当に重要だと感じる

音の流れもそうだし,何よりも和声の移り変わりがどうなっているか,それを旋律側も意識しないと食い違いが出てしまって,結果的に面白くなくなってしまう。

 

何と言っても,バロック・音楽は和声の音楽と言っても良いのだから。