50年間の放送作家生活を振り返って強烈な思い出を一つにラブアタックバスがある。青春の出会い番組といえる『ラブアッタク』では東京の出場者のために大型のラブアタックバスを仕立てて『ラブアッタクバス』を運用していた。出場者の半分近くは東京の学生だったので彼らの応援団を東京・大阪間を送り迎えするためだ。番組を盛り上げるため必要なことで、彼らに交通費なしで気軽に来てもらうという狙いだ。出場者には番組から交通費・宿泊費が出るので問題がないが応援団には何も出ないので急遽の一策として大型バスを購入しラブアタックバスを仕立てて運用していた。ただ、安い中古バスだったためか恐ろしくスピードが出なかった。特に悲しい思いをしたのは東名高速道路の登りの坂道。やっと時速30キロぐらいしか出ず神経をイライラさせた。

 私も何度か番組の収録が終わりに東京までラブアタックバスに同乗したことがある。収録終わりの帰りバスはスタジオの熱気を移ったみたいで、あちこちで歌声が湧き上げり、笑い声が渦巻いていた。全員笑顔で高揚し、まさに青春が吹き荒れていた。これが『ラブアタック』の大きな魅力だったと思う。主役は若い男女の若者で決して番組の制作者ではない。それを最も感じさせたのがラブアタックバスだった。

 事件は私がラブアッタクバスに同乗した時に起こった。それまでかなりビールを飲んでいたのか、一人の女子大生がオシッコが出るバス止めて!と大声で叫び始めた。しかし、サービスエリアなど近くになくバスは止められなと運転手はいう。女子大生はさらに声をあげて止めて!と何度も叫んだ。が、バスはとろとろ走るだけで一向に止まる気配はない。たちまち女子大生の止めて!の絶叫に呼応するかのように、バスの中でガンバレガンバレの励ましの大合唱が起こった。それでもバスはちっとも止まる気配はない。こちらはオロオロするばかりだったが、しばらくして運転手さんがなんとかバスを止める良いポイントを見つけ、やっと高速道路の路肩にバスを止めることが出来、事なきを得た。

 しかし、バスの乗客全員が一人の女性の危機状態を心配して声を張り上げ応援したあの情景に強烈な印象が残った。決して命に係わるような危機状況ではないのだが、バスの中の若者全員が穢れのない心を一つにして叫んだバスの中は、はまさに青春が吹き荒れていたように思う。甘酢パイが逞しく、若者特有の青春が吹き荒れていた。視聴者参加番組を数多く手掛けてきたが、このようなことは他の番組にはない。これは青春番組『ラブアッタク』の魅力であり、特徴であり、あの時代の文化だったと思う。