『ワイドショー・プラスα』を担当し始めて毎日が別世界になった。月曜から金曜までの午後2時から1時間、生本番に立ち会う。そのあと夕方6時頃から同年代のADや音声ら数人と飲みに行く。彼らの一人にお姉さんがお初天神でスナックをしている人がいて、よくその店に乗り込んだ。最終電車に間に合わないときは彼らに誘われ放送局の簡易宿泊所の二段ベッドに潜り込んだ。24時間入れる風呂もついている。その風呂で奇怪な事件が起こった。

 報道のベテランカメラマンが取材が終わり風呂に入っていると見知らぬ男性がいた。2,3度顔を合わせ、軽く挨拶しているうち不審者じゃないかとピンときた。早速、警備員に通報するとすぐに警察が駆けつけてきた。ところが警察が取り押さえてのは不審者なくベテランカメラマンの方だった。よれよれのジャンパーを着て顔は黒く日焼けして、髪もボサボサだったので間違われたのだ。一方、不審者は背広にネクタイ姿の立派な身なりをしていたという。これは嘘のような本当の話だ。

 また、白昼にグランドピアノを盗まれtことがあると聞いた。ABCホールに置ていた白い立派なグランドピアノが何者かに盗まれた。盗んだ男たちは作業服姿を着ていて、警備室の前を通って堂々と持ち出したという。作業服を着ていたので誰も怪しいとは思わず、翌日か翌々日に気が付いたとのことだ。

 当時の朝日放送は昼夜活動する若々しくて多忙な会社だった。社員以外にも関係者も多く色々な人が自由に出入りしていた。同様の面白いエピソードにも事欠かない。今から考えるとあの頃の日本社会と同様若々しく元気溌溂な会社だったと思う。