ほぼ半世紀前に担当した朝日放送の『ワイドショー・プラスα』には楽しい思い出がいっぱいだ。毎週木曜日の夜7時から開始した定例会議は司会を務めるアナウンサーの乾浩明が集まったみんなを爆笑させ、村田、十日市の二人のプロデューサーも負けじとダジャレを飛ばして場を盛り上げる。そして午前0時頃に夜食が出る。これがまた楽しみだ。近くのお寿司屋さんから飛び切り美味しい特上の桶が届く。時々昼間もお店に食べに行った。その時店で見かけた可愛い小学生のお嬢さんとは今でも朝日放送ですれ違うことがある。懐かしい!会議が終わるのは午前3時、4時。タクシーで帰る。家に近づくと近所の新聞配達店に明かりが灯り、人々が働き出している。あーもう世の中が動き始めているのだと感じさせられた。1、2時間ほど寝てまた別の会議に出席。あの頃はそれで平気だった。

 『プラスα』は主婦向けの情報番組なので、夫婦の悩み相談もよく取り上げた。その一つに今でも忘れられないショックなことがある。年配夫婦からの相談だったが、旦那さんの男性自身がふにゃふにゃで役に立たないので奥さんの願いで鉛筆を中に入れ事を済ました。もう耐えられないと旦那さんのからの悲痛な相談が来た。えー本当にそんなことがあるのかと今でも信じられない。

 また未解決事件を取り上げた事も強く記憶に残っている。例の三億円事件をはじめ興味深い事件をいくつか揃えた。その中で大阪のニセ夜間金庫事件は忘れられない。笑えるというかあほらしい怪事件だ。大阪梅田ある銀行の夜間金庫に客が現金袋をを投入したところ、中へ入らなず無理やり押し込むと金庫の表面が膨れ上がった。不信に思い警備員に通報するとニセ夜間金庫とバレた。なんと金庫はベニヤ板で作られていた。犯人はそんなに現金が投入されるとは思わなかったらしい。なんと間の抜けた事だ。

 この時もロケハンに行ったり色々資料を調べて台本を書いた。毎週テーマが替わるので大変は大変だったが、先輩諸氏に人間の面白さや社会の多様さを教えてもらい、必死に食らいついていった。今から考えても大変勉強になる楽しい番組だった。