17年前の今日、父が死んだ。享年62歳。胆道癌だった。63歳の誕生日が、葬儀の日になった。
僕は、父が嫌いだった。確かに父は世間的には、偉かったと思う。祖父が友人達と始めた事業を拡大して、今の僕の3倍位の年収を得ていた。家庭は、大切にする人だったと思う。でも、尊大で自分勝手な父親が嫌いだった。父も自分にまったく似てない内向的な僕に、戸惑っていたと思う。事有る毎に弟と比較した。弟は、勉強は出来なかったが、スポーツが得意だった。顔は、父の子供の頃にそっくりで、気質も父に良く似ていた。妹達は、母親に風貌で勉強もスポーツも出来た。それに比べて、僕は勉強もスポーツも出来なかった。両親や他の兄弟は小柄で痩せていたが、僕はブクブク太って如何にもノロマ感だった。弟は、要領が良く友達も多かった。妹達は、勉強もスポーツも出来る美人姉妹で評判だった。
父が、僕に口うるさかったのは、仕方の無い事だった。僕の事が、心配だったのだと思う。そん事も、分からないで、僕は父を嫌っていた。
鋼の様な身体をしていた父だが、少しづつ病んでいたんだと思う。僕が中学に上がる頃から、家でごろ寝している事が増えた。大学を出る頃になると、頻繁に病気をする様になった。風邪もひいた事無いのに。
僕が社会人になって暫く経つと、胆石で入院した。胆道に詰まった胆石を除去すると、癌細胞が出て来た。胆石の陰で分からなかったが、癌はかなり進行していた。短い間に入退院を繰り返した。元々痩せてたのに、更に痩せて髪の毛も全て抜け落ちて、カツラを付けた。
弟は、毎日の様に父の見舞いに行った。僕は行きたく無かったが、父が色々と用事を言いつけるので、嫌々病院に通った。早く来いとか母を通じて電話を寄越す癖に、顔を見ると「仕事はどうした?早く帰れ」
ある朝、母から早く病院に来る様に電話が有った。病院に行くと「何故、もっと早く来なかったの!」母に、物凄い剣幕で怒鳴られた。父が、死んだのだ。僕は、泣かなかった。「死んだんだ。」唯、そう思った。
まだ、意識がはっきりしている頃、父は僕に言った。「色々有ったけど、良い人生だった。」父は、自分の死期が近いとも言った。
父の事業は、叔父が引き継いだ。僕は、父が心配した様に失敗だらけの人生を送っている。父を超えるのは、僕には到底無理だ。しかし、僕も父の様に死期が近くなったら、言えるだろうか?
「色々有ったけど、良い人生だった。」
命日の今日、母と弟の3人で墓参りに行って来た。今でも、父に対する思いは複雑だ。それでも、月に一回位は墓を掃除して、花を添えている。
