「あら、駄目よ。」これが、僕が今まで観て来た映画・漫画で一番怖い台詞です。これは、日本映画「歩いても歩いても」の台詞です。映画自体は、別に特に恐怖映画では有りません。子持ちの女性(夏川りみ)と結婚した男(阿部寛)の、お盆の帰省中の出来事を描いた映画です。たしかキャッチフレーズは「人生は、少しだけ間に合わない。」日々の暮らしを淡々と描く事で、人生の機微を語っています。
主人公は、溺れた子供を助けようとして死んだお兄さんの供養の集まりの為、帰省します。お兄さんの供養には、家族と助けた子供(もう成長している)が集まり食卓を囲みます。恐縮しながら、供養を終えたかつての子供が帰った後、主人公は言います。「もう、良いんじゃないか。」子供ももう大人になって昔の事なんだから、自分達だけで供養すればと。
「あら、だめよ。こうして、一緒に供養してあの子だけのうのうと生きている事を、後悔して貰わないと。」樹木希林演じるお母さんは、淡々と言います。一生共に供養して、死んだ息子の事を忘れないで欲しい。そして、自分だけがのうのうと生きている事を後悔し続けて欲しいと。台詞は間違っていると思いますが、意味はこんな感じです。お母さんは別に怒鳴ったり、泣き喚いたりはしません。唯、淡々と言うのです。僕はこの台詞が今まで、一番怖いです。
