ポーラスターのブログ


2010年 短歌 作品


きみが背に星のしずくの降りしより香りて朝の光さすらむ

夢よりも儚きものは夏の夜の露にぬれにしきぬぎぬの朝

触れもみで逢うことさへも叶わぬと言いしきみの背遥かに見えず

あの空に流るる星の光にはきみが涙の頬を照らさん

行いしほどにいよいよ想われてたどりし影はきみの姿よ

朝焼けにふとまどろみしいとまさへまぶたに消えぬきみの面影

わが想ひとどかぬものと知りながら袖振るきみの影を慕ひて

夏の陽に相模の関を越えるとも袖振るきみにまみゆことなし

灼熱の陽は陰りきて軒先のきみが風鈴揺らすのを待つ

きみが背に揺れる木漏れ日夏の陽の額に光るひとすじの風

言問えど応えもなくて朝露の瞼に浮かぶきみが面影

きみが背に涙のわけを言問わばおのがさだめと言いし星影

旅立ちの港の藍の深さより眠りを覚ます朝焼けの空

君にかくあい見ることのうれしさもまださめやらぬ夢かとぞ思ふ

ゆめの世にかつまどろみて夢をまたかたるも夢よそれがまにまに

夏の夜にただあくがるるわが想い涙の跡の星の光よ

逢いたくてただ逢いたくてたどる夜は朝露(つゆ)をまといしきみを抱きて


ポーラスターのブログ

”いつも出前持っていくスナックで、
突然お客の女性がこどものぼくを抱きしめて
さめざめと泣きだしたんですよね。

さめざめと泣いている時と
慟哭になったときとで
劇的に匂いが変わったんですよ。

それは茹でた豚の匂いでした。”


”出前に行ったストリップ小屋の楽屋で
いろんな女のひとがいました。
触ってもキスしても表情一つ変えないんで
その可愛がられようったらなかったですね。
なんか謎めいているっていうか。
そういう不健康な可愛がられ方してたんですよ。

沈黙するって

そうするって決めたんですよ。
いずれはとんでもないことになるって
予感はありました。”


”苦しかったり、辛かったりすることに
うっとりする、っていうことで
折り合いをつけることに決めたんですよ。
よしあしじゃないんですよ。
こどもがきめたことですから。”


”ぐいって抱きしめられて
ズボン脱がされたときに
ドバッとその女の人の頭に吐いたんですよ。

そのひとの頭に吐いて、
湯気が立って・・・

天使的でいることにたいする怒り。
それまでぼくはこの街で天使でいられるのは
ぼくしかいないって覚悟してたんです。
でもそういうことがあって、
ぼくは天使から降りる口実ができたんです。
このまま天使で居たら
とんでもないことになるって。

それがきっかけで吃音とかチックとか
治りましたね。

きっと天使的でいることと
関係あったんでしょうね。”


”香水のいい香りとかって
何十倍にも濃縮すると
究極は大便の匂いになるんですよ。

それを何千倍にも希釈するととても
いい匂いになる。

あのときの記憶ってその濃縮した原液で。

ぼくの音楽やエッセイは
それを何千倍にも希釈して
ふつうのひとが聞いたら
うっとりするような薬効
を持っちゃってる。

そのことは運命なんで。”


【菊池成孔:ぼくが子どもだったころ:NHK】