2010年 短歌 作品
きみが背に星のしずくの降りしより香りて朝の光さすらむ
夢よりも儚きものは夏の夜の露にぬれにしきぬぎぬの朝
触れもみで逢うことさへも叶わぬと言いしきみの背遥かに見えず
あの空に流るる星の光にはきみが涙の頬を照らさん
行いしほどにいよいよ想われてたどりし影はきみの姿よ
朝焼けにふとまどろみしいとまさへまぶたに消えぬきみの面影
わが想ひとどかぬものと知りながら袖振るきみの影を慕ひて
夏の陽に相模の関を越えるとも袖振るきみにまみゆことなし
灼熱の陽は陰りきて軒先のきみが風鈴揺らすのを待つ
きみが背に揺れる木漏れ日夏の陽の額に光るひとすじの風
言問えど応えもなくて朝露の瞼に浮かぶきみが面影
きみが背に涙のわけを言問わばおのがさだめと言いし星影
旅立ちの港の藍の深さより眠りを覚ます朝焼けの空
君にかくあい見ることのうれしさもまださめやらぬ夢かとぞ思ふ
ゆめの世にかつまどろみて夢をまたかたるも夢よそれがまにまに
夏の夜にただあくがるるわが想い涙の跡の星の光よ
逢いたくてただ逢いたくてたどる夜は朝露(つゆ)をまといしきみを抱きて