父ちゃんと母ちゃんと妹二人。計5人。
そんな我が家にやって来た6番目の家族。
だから「ロク」。
子供の頃、始めて飼った犬の名だ。
鼻の回りが黒くて、ちっこくてコロコロしてて
眼がまん丸な、ソレはソレはカワイイ子犬だった。
近くの空き地に連れて行くと、トコトコ付いて来て
私が立ち止まると、そのたび足元にペタリと座る。
(勝手に走り回ったりしない、賢いヤツ。)
そう思っていた、その時は。
後で分かったコトだけど、ウチに来た時既に
ロクはジステンバーに罹患してしまってた。
もう苦しかったんだ。
勝手に走り回らないんじゃなくて、走れなかったんだ。
必死に後をついてきて疲れ果てて座り込んでたんだ。
ちっとも気付かなかったよ。
ゴメンよロク。
★
ご飯を残し、鼻をグズグズさせて元気がない。
妹が叫ぶ。「ロクがおかしいよ!」
慌てて病院に連れて行った時にはもう手遅れだった。
その夜、泡を吹きながら身体を硬直させて小さなロクは死んだ。
冷たく、そして硬くなったロクをどうしても触れない私を下がらせ
親父が泣きながらロクを近くの空き地に埋めた。
「もう犬なんか絶対飼わんぞ!」とかすれた声で言いながら。
★
自分に生き物を飼う資格なんてない。
「もう犬なんか絶対飼わない」・・その日から私もそう思っていた。
虐待されてたコイツと出会うまで。

ロク。
数日間しか一緒に居られなかった6番目の家族。
オマエにしてあげられなかった分、クリ子を長生きさせるよ。
もし良かったら力貸してくれよ☆