ミナミ。
あの頃「ヨーロッパ通り」と呼ばれてた周防町の。
心斎橋筋から東に折れた少し先。そこに「葡萄屋」はあった。
小さなハコだけど私立のオシャレな子達が集まるディスコ。
いつも鏡の一番前でユラユラ踊っていたオレ達。
誰が呼んだかワカメダンサーズ(恥ずかしい)
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それにしても、あれだけ毎日
よく飽きもせずに通ったもんだ。
エピソードは、ごまんとあるけど
ほとんどココじゃ書けないよーなコトばかり。
ま、大体がつまんねー色恋沙汰なワケですが。
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「キャァァ~!」
チークタイム。
照明が落ち、SLOWJAMに変わったとたん響く悲鳴。
フロアの真ん中でケンジがフォークを振り回してる。
(あ~ぁ・・又かよ・・)
頭を抱えながら止めに入る。
「分かった分かった、ケンちゃん落ち着けって」
「離せ!オラ!」
ケイコもケイコだ。
よりにもよって新しい彼氏とココに来るなんて。
やっとの思いでトイレ横の壁に抑えつける。
「なぁ、ケンちゃん。もう忘れろって。ケイコちゃんが
金持ってるオトコを選ぶってんなら仕方ないだろ?なぁ」
まだ騒然としてるフロアじゃ、ヒデキ君がブースから出て
相手を抑えてくれてた(DJまで巻き込んじゃってゴメンよ)
★
あの時、見習いDJが慌てて回してくれたのがこの曲。
アースの「After The Love Has Gone」(これはLIVEバージョンだけど)
顔をグチャグチャにして泣くケンちゃんの
震える肩を抱きながら精一杯笑いかけて言った。
「なぁ、また一緒に声かけに行こうよ」
真っ赤な顔で、しゃくりあげながら子供みたいに首を振る。
「なぁ行こうよ、な。付き合うから、さ」
★
「エックエック・・ヒックヒック・・」
こんなに文字通り「オイオイ」泣くヤツを初めて見た。
ドカチンのバイトして昼飯抜いて、やっとの思いで
ティファニーのオープンハート買ったの知ってるよ。
誕生日に間に合わすつもりだったんだろ?
何度フラれても、本気の本気で好きだったんだな。
アレ?何だかオレまで目の前が霞んできた。

言っとくけどスモークのせいだからな☆