海沿いの街で育った。
潮風をまともに受けながら、浜に向かう長い坂を下る。
力一杯、限界まで漕ぐペダル。古い自転車が悲鳴をあげる。
製粉工場脇の誰も来ない防波堤。
テトラポッドに腰を下ろして海を眺めた。

(こうして潮風に吹かれながら海を眺めていると
イヤなコトがあっても不思議に気分が晴れる)
小学生の頃、ごくごく自然にそう知って以来、
ずっとソコは私だけの秘密の場所だった。
中学生になって初めて誰かにその秘密を明かした。
都会からやってきた転校生のヨーイチ。
垢ぬけた物腰と言葉遣いのせいで、逆に周囲と馴染めずにいた
ヤツはその日、防波堤の上で初めてホッとした顔を見せた。
それからはお互いに何かあると(いや、何も無くても)
しょっちゅう2人でソコに向った。ボロ自転車で。
対岸に見える神戸と淡路島と、水平線に伸びる夕陽の道を
見つめながら飽きずに話した。将来の夢、好きな子のコト。
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そのヨーイチと先週、会った。
いっぱい話して、いっぱい笑った。
少し理屈っぽくて、愚痴も多くなったけど。
そして結局・・
あの頃、防波堤の上で夢見ていた姿とは
2人とも遠く遠く離れてしまったけれど。
生きていられるなら20年後も30年後も
やっぱり一緒に座って話していたい、と思う。
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あ。
ちなみに。
ヤツは歌って踊れる役者、自分はクールなジャズミュージシャン。
それがあの頃の夢でした。
皆様の夢は今、叶っているでしょうか?☆