「まゆみ」さんからの爆音レビュー! | THE BACK HORN『アサイラム』爆音レビュー大会 Powered by Ameba

「まゆみ」さんからの爆音レビュー!

雑然として、そして重い。
それが、最初にこのアルバムを通して聴いた際の正直な感想だった。

しかし、改めて考えればそれもそのはず、
「アサイラム=避難所」に集まるような、何かしらを抱えた者(曲)達に、
整然さ軽快さを求めるのが、そもそもの間違いと言うものなのだ。

そんな「避難所」の中では、
仏や神に傾倒する者(雷電、ラフレシア)、
戦い、そしてひとたびはそれに疲れた者(戦う君よ、再生)、
届かぬ遠く美しき景色と慕情に浸る者(羽衣、海岸線)、
物欲に、淫欲に溺れる者(ペルソナ、太陽の仕業)、
世界を閉ざす者(閉ざされた世界)、
涙を流す者(汚れなき涙)、
様々な思いを抱え、そして、「ここに来るしかなかった」者(曲)達が、
無秩序にひしめき、己が心なる音を、ただあるがままに叫び、奏でている。

しかし、いずれにも共通していることは、
「光ある外に出ることを諦めず、むしろそれに向かって手を伸ばしている」
と言うこと。

その証拠に、ラストの『パレード』にてその扉が開かれれば、
差し込む眩しい光のごとき音と共に、
その者(曲)達は望み通り外へと向かい、飛び出していくかのよう。

そうして彼らが次に向かうのは、ライブという「アサイラム=聖域」。

解放され、光を身に受けた彼らの姿は、その「聖域」において、
「避難所」の中で感じた印象とは、また違った姿に見え、聴こえることだろう。
むしろ、そこが「聖域」となるのは、
そのような彼らが奏でる音ゆえなのかもしれない。

「アサイラムからアサイラムへ」

抑圧された闇を知り、
解き放たれた光を知る、
そうした者(曲)達は、いかなる力を発揮するものなのか、
是非ともそれを確かめてみたいものである。


・・・そしてそれは、その昔、まさに「避難所」の名を冠するある場所にて、
己が命の音を、叫び、響かせていたメンバーが、
幾数年を経て、自らの手で、この「聖域」を作り出したと言う感慨深い出来事に、
何処かよく似ているものだな、と、ふと思った。


まゆみ