「アザー」さんからの爆音レビュー! | THE BACK HORN『アサイラム』爆音レビュー大会 Powered by Ameba

「アザー」さんからの爆音レビュー!

 繊細と奔放を自由に行き来するヴォーカルも、キレと強度を増した演奏陣も、これまでとは違った顔を見せながら、しかし聴けば聴くほどバックホーンらしい。何よりも全篇を通して伝わってくる真摯さが、毎度のことながら、バックホーンをバックホーンたらしめているのだと思う。
 思えばバックホーンは当初、腐り切った現実世界への憤怒と生への渇望、どうしようもない悲しみを、終末的な架空世界の中に直截的に表現してきた。人間が砂時計に落としこまれ、心臓はオーケストラを奏でる世界で、明日をも知れぬ激情を、荒々しく叫んでいた。その後、苛烈な、あるいは緩やかな、幾つもの顔を見せる現実を踏みしれてきたバックホーンは、『パルス』以降今度は確信を持って、懐かしきあの世界に足を踏み入れたように思える。絶望と焦燥感ではなく、未来を掴もうとする確かな意志を持って。
 『アサイラム』は、長い道のりの先に在った、バックホーンの現在地だ。ここからまた始まる新しい旅を楽しみにしたいし、それを自分自身で体験したい、ライブに行きたいと思えるアルバムだと思う。

アザー