いつものデートならなら、帰る時間だった。

なのに、

「もう少し時間いいかな?」

なんてめがねくんが珍しく言った。


車を走らせたのは、夜景の見える海沿いの小さな公園星空

天気がよくて、星が見えて、夜景もきれいで、

そして隣にめがねくんがいて、とっても幸せだった。


ベンチに座って、

「あっ、これお誕生日プレゼント」ってどきどきしながら包みを

差し出した私。


「うわっ!あ、ありがとう!!」

彼は満面の笑みで受け取ってくれて、その場で包みを

開けてくれた。


「うわ~使いやすそうな財布だね!

大事に大事に使わせてもらうね。ありがとうラブラブ

ってとっても喜んでくれた!

よかったぁぁ~にへ



そして、そのまま手を繋いだまま海を眺めてた。

あんまり幸せで、そしてなんだかぽかぽかした気持ちで

彼の隣に座ってた私。




それは、あまりにも突然の告白だった。





「・・・・asutaちゃん、俺ね、海外に行くことになったんだ」




は???

あまりにびっくりして、彼の顔を見つめる私。



「俺も数日前に知らされて、びっくりしたところで・・・・」



正直その後どんな話をしたかも覚えていない。





彼が海外に行ってしまうこと



期間は半年かもしれないし、プロジェクトの進行自体では

年単位になるかもしれないこと




普通のOLさんの私にとってそれはまさに夢見たいな話。

でも、それは紛れもない現実で。



「正直・・・半年って決まってたら待ってて!

って言えるんだけど・・・」



彼の顔を見ると、今まで見たことのない辛い顔をしてて。



「・・・・・asutaちゃんも・・・悩むよね」

って私の目をじっと見て彼はつぶやいた。



「悩まないよ・・・・頑張ろうよ・・・・」

口からでた言葉とはうらはらに、彼から目をそむけ下を向くしか

無かった私。



泣くな!

泣いちゃだめだ!!!

泣くなんて卑怯だ!

めがねくんが一番辛いんだから!

口をぎゅってかみ締めて、涙をこらえるしか私には出来なかった。



それからどのくらい時間が過ぎただろう。



「・・・・少し歩こっか?」

めがねくんが私の手を引いた。



公園はカップルばっかりで、どのカップルものすごく幸せそうに

見えた。

みんな沢山の悩みを抱えているかもしれないのに、その時の私には

自分が世界で一番不幸に思えて・・・・。



歩きながら彼はおもしろおかしく、赴任先の海外の話をしてくれた。

もしかしたら食中毒おこしてすぐ帰ってくるかもよ?とか

これ以上日焼けしたら現地の人に間違われるとか

一緒にいた私も、なんだかおかしくなって少し笑ってしまった。



公園の一番端で彼は、私をぎゅって抱きしめてキスをくれた。

たくさん、たくさんキスをくれた。

「・・・・・大丈夫だから」

彼が私の耳元でそうつぶやいた。



彼が、私から離れていく。

それを考えるだけで、呼吸が止まる気がした。

こんなに、こんなに、愛してて

30年探し続けた人に、やっとやっと出会えたのに

なんで離れなきゃいけないの?



苦しいよ。



苦しいよ。