前回はとあるあはき業界に対するアンチテーゼな書籍を紹介いたしましたが、
私もこれに関して自身の経験をもとに話していきたいと思います。
①学費について
鍼灸の専門学校は、他の医療関係の専門学校と同等か若干割高のようです。
看護系では病院や都道府県・市町村の奨学金制度があったりするので、
卒業してから指定の職務先病院などで一定期間勤務するいわゆるお礼奉公などがあるため安い場合がありますね。
県立や国立の医療大学の中には、検査技師、リハビリ職の養成科があるので、
頑張れば国立大学や県立大学の学費で勉強できますが、鍼灸は単独の学部や学科の国立大学での設置が許されていません。
(このあたりから国が正式な医療に”漢方や針灸などの東洋医学”を入れていないという答えになります)
最近では私学のいくつかの”○○鍼灸大学”が”○○医療大学”に名前を変えてしまったのは、”鍼灸”だけでは学生が呼び込めないという悲しい現実からからでしょうか?
私は仙台の赤門鍼灸柔整専門学校でしたから、学費がかなり安かった・・・
(晴眼者で入れる学校で日本で一番安かったかも?)。
逆に言えば鍼灸大学を筆頭に都会の専門学校はかなり授業料等が高額でしたので、
赤門以外は入学を考えてはいませんでした。
20年前くらいなので、きちんとは記憶していないのですが国立大学並み(年間70万くらい?)だったように思えます。
鍼灸とマッサージの資格が同時に取れるところも少ないので、同級生は北海道から沖縄出身までいました。
今は3年で400万円くらいかかるようなので(いつの間に値上げしたかも?)、
他の専門学校と差がないため、(学費で)赤門をわざわざ選ぶメリットはなくなりました。
学費以外には特色のある教育をしているわけではないので、
今やわざわざ赤門に入るメリットは(昔ほど)ないのかもしれません(関係者には怒られるかもしれませんが・・・)。
高卒者もいましたが、同じかそれ以上の数で大卒上がり、社会人経験者など色々な人がいました。
他の医療職の方は学生時代、例えば病院などで将来就くであろう職種のアルバイトをすることは殆どないと思いますが、
1/3くらいは学校が終わってから接骨院などでアルバイトをしていました。
内容としては電気をかけたり、体を揉んだりすることが仕事です。そうやって生活の足しにしていることが多かったです。
今は資格の関係上?禁止しているみたいですけど。
もちろん、鍼灸にはそのような制度がありませんので、高額な授業料はすべて自分が支払わなければなりません。
したがって、ある程度サラリーマン時代に貯め込んで、その後に入学する生徒もいました。
⓶ 就職先と収入について
学費について、専門学校の学費がやや高めと言いましたが、医者と違い投資しても元がとれる保証は全くありません!
結論を言いますと、(今のところ)この職業は就職先もなく、収入も低く、安定しないです。
このことが鍼灸師になり手がいないことのすべてを語っていると思います。
もっときわどいことを言うと、国家資格を取った後に鍼を打ったり、灸をすえたりする機会さえも少ないということです。
そんな資格他にありますか?
まあ、授業で一生懸命に習った脱臼や骨折が、
全く卒後に行われないというか、やる機会を奪われている柔整よりはまだマシだと思いますけど・・・。
これは過去一年間に鍼灸を受けたことがる人がどれだけいたかを調査した結果ですが、
2001年には6.7%だったものが2014年では5.6%となっています。
その後のデータはみていませんでしたが、たしか5%を切ったとか切らないとか言われています。
ところが、ごく最近のデータでは、ここ2,3年で若干受療率が上がっているそうです。
なんでも、最近NHKさんの方で、東洋医学や鍼灸の特集を何度か組んでいただいたことで、
認知度が上がったということらしいです。
凄いですね、テレビ、そしてNHK!
病院に生涯行ったことが無い人は、今の世の中殆どいないと思います。
たぶん、90%以上の人は何らかの形で病院に行ったことがあると思いますが、
特異な医療である鍼灸に関してはその程度の%しか言ったことが無いということです。
それだけ一般の方に触れる機会が少ないということは就職先が少ないということです。
多くの人は接骨院か訪問鍼灸・マッサージに就職すると思います。
鍼灸をやってる病院は、検索するといくつかの件数がヒットしますが、
私が学生だったころに比べると、増えている気がしません。
ほとんど、就職は出来ないと考えて良いでしょうし、奇跡的に就職しても収入は他の医療職よりも安いことがほとんどです。
これは保険診療科目に鍼灸が入っていないので、
正式な収入源に鍼灸師を雇っても期待できないからです。
したがって、病院内で鍼灸を受ける場合は実費や無料です。
それでも、鍼灸で患者さんが呼べるなら、経営者ももっとたくさんの鍼灸師を雇用すると思いますが、
現実はどうでしょうか??
そううまくいってないところがほとんどです。
これは鍼灸で効果を出す方法と病院サイドの考え方の違いでうまく患者さんを治せていないことが一つ考えられます。
詳しくは後述します。
次にある論文を元に表にしてみたものですが、”年収”を雇用者分を含む1事業者あたりの年間施術料収入の総額とありますので、
多分一施術所あたりの総売り上げのことを指しているのだと思います。
また、経費のことを言いますと、接骨院ではスタッフの給料や治療機器のリース代などがかなりかかりますが、
鍼灸などは一人親方で、かつ機械類もほとんどないところが多いですので経費は接骨院よりはかからないと思います。
晴眼者とは鍼灸もしくは鍼灸とあん摩マッサージ指圧のこと、
鍼灸接骨院はこれらの資格にプラスして柔道整復師の免許を所持している人のことを言います。
視覚障害者では基本的に柔道整復師の免許を所持している人はほとんどいないと思われますので、
晴眼者と同じ鍼灸もしくは鍼灸とあん摩マッサージ指圧もしくはあん摩マッサージ指圧のみです。
接骨院の年収はさすがに凄いですね。
ただこれは今から10~20年くらい前の収入ですので、
現在とは比べ物にならないほど社会保障費に対する国の考えが甘かった時代なので保険請求の審査が甘く・・・
これ以上はちょっと具体的には言えませんが、下手な若造柔道整復師でも「3年やればビルが建つ」といわれた
時代の最後の方なのでまだ甘い蜜を吸うことが出来たのかもしれません。
そのころと比べると、今や柔整師の年収は半分くらいになっているのではないでしょうか?
視覚障害者の先生方は、なかなか晴眼者と同じくらいの収入を得るのは難しいと思います。
ただ、作業を効率的に分担することで行かせる道はあると思います。
これも後述します。
美容師と比較すると、平均300万、店長となると350~450万が平均的なところのようです。
したがって、美容師さんと同じような年収なのではないでしょうか?
最近、美容師さんの患者さんに聞きましたが、理美容の業界では独立するほかに
業務委託、つまりフリーランスで働く人が増えているそうです。
これによって、店舗側の人件費の問題、束縛時間の問題、収入の問題などがクリアしました。
またまた、後述しますが、私はこの働き方こそ、わが業界で採用すべき働き方なのではないかと考えております。
少し改革が必要ですが、病院や治療院でのフリーランス契約制度が我々の業界での明るい展望の一つと考えております。
決して、この作者のように駄目な業界とは思いません。
続く・・・・