菅は政治的に愚鈍である [民主党代表選 小沢が勝つ全真相]

(日刊ゲンダイ2010/9/1)

小沢との会談が終わり、夕方6時過ぎから会見した菅首相の出馬表明は、言葉だけが上ずり、動揺が明らかだった。
もしかしたら、小沢との会談の直前まで「小沢不出馬」のガセ情報を信じていたのかもしれないが、それこそが菅の政治的愚鈍の証明だ。
相手の出方も分からない総理では、この国の経済運営や外交などやれるわけがない。
評論家の塩田潮氏は、「小沢氏がかなり前に出馬を決断したのは、菅首相にこのまま政権を任せていたら自民党に政権を取り返されてしまうという危機感から」と断言した。それほど菅の政権運営は、小沢の目から見れば、スキだらけで子供っぽいのだ。
それも認識できず、自分の力不足を恥じるどころか、「小沢排除」を口にしていれば、支持率が稼げ、2、3年は首相を続けられるとタカをくくっていた菅。
これでは党内から「とても選挙上手な小沢の相手ではない。菅は惨敗する」の声が出るのも当然だ。
「官邸が挙党態勢を模索し始めたとき、すでに小沢陣営は選対を立ち上げ、役割分担も決めて、多数派工作に動き始めていた。先手必勝、これは選挙の常識です。小沢グループには、鳩山、旧民社、旧社会、樽床などの各グループが支援に回る。菅陣営はやっと選対を立ち上げたばかりだから、もう“勝負あり”ですよ」(民主党関係者)
この2カ月半、何の仕事もせず、代表選も惨敗となったら、菅は何のために首相になったのか。

◇前原、岡田、野田、仙谷、枝野の行方
小沢出馬表明で、菅以上に真っ青になっているのが、この幹部連中だろう。全員、菅続投支持を打ち出した大臣や幹事長だ。小沢が代表選に勝ち、政権を握ったら、待っているのは冷や飯だ。この5人はどうなるのか。
小沢は、党分裂のために代表選に出馬したわけではないので、ロコツな排除の仕返しはしない。しかし、この2人だけは“例外”。岡田外相と仙谷官房長官だ。
岡田はたびたび、「検察審の議決で起訴されるかもしれない人が首相を目指すのはおかしい」と言ってきた。外野のマスコミや野党議員が言うのは勝手だが、仲間がわざわざ傷口に塩を塗る必要はない。世間受けばかりを狙う――これは小沢が最も嫌うことだ。
仙谷も、小沢排除では菅首相や野田財務相、枝野幹事長の尻を叩いてきた急先鋒だから、小沢政権になったら居場所はない。それは本人たちも覚悟している。再び窓際に追いやられるのは確実だ。
「ただ、前原国交相だけは調子のいい人だから、代表選の途中から“大臣は中立であるべき”とか言って、小沢へゴマスリを始めておかしくない。反小沢勢力の分断のために、小沢も前原などは留任させるかもしれません」(民主党事情通)
「小沢排除」を叫んできた幹部たちが、「自分は排除しないで」とゴネる場面があるかないか。

◇14日の投票日までは一寸先は闇
それだけに、負け戦に突入せざるを得なくなった菅陣営は必死だ。保身と延命のために、9月14日の代表選投票日まで、何だって仕掛けてくる。
「小沢氏の“政治とカネ”の問題が争点にされるのは間違いない。ただ、小沢氏も出馬の腹をくくった以上、この問題は考えている。首相になったら、国会の集中審議に応じる準備はできているから、“国会でキッチリ説明したい”と、逃げ隠れはしないでしょう」(塩田潮氏=前出)
不気味なのは、仙谷官房長官の動きだ。法務省に働きかけて検察審の議決を早く出させるんじゃないかといわれている。「まさか、そこまでは」だが、弁護士出身だから検察に詳しいとニオわす仙谷は、これまでも検察情報なるものを流し、小沢陣営を揺さぶり、分断しようとしてきた。マスコミと二人三脚で、小沢叩きもさらにエスカレートさせるだろう。どちらに投票するか決めていない議員を引き込むには、「小沢ダーティー」を強調するしかない。その意味では何が飛び出すか分からない代表選だが、小沢のイメージはすでに落ちるところまで落とされているから、響くかどうかは別問題だ。