5月27日はお昼からリプロダクティブヘルス関連団体のギャザリングイベントだったのですが、その前の午前中、産婦人科医の対馬ルリ子先生が理事をお勤めのNPO法人女性医療ネットワークが主催するジョイ・ラボという女性医療の医療者向けのセミナーに参加してきました!

●ジョイ・ラボ「虐待と対策 ~予防としての性教育・人権教育の重要性 ~」
女性医療に関する様々なテーマで、専門家をお招きしてのセミナーを開催しているのですが、今回は「虐待と対策 ~予防としての性教育・人権教育の重要性 ~」と言うテーマで、講師は、ウィメンズクリニック・かみむら院長の上村先生★

上村先生は去年北区のグリーンハートさんが主催するセミナーで初めてお会いしたのだけれど、人として心から尊敬するお方です!でもすごく気さくでお話上手なところも素敵です!アップ

患者の平均年齢が21歳という婦人科クリニックでの診療や一日50件以上の思春期メール相談に答えながら、子供たちの本音や悩みを伝えるべく年間約100回に及ぶ全国での学校講演や一般講演を行われています。

そして今回のファシリテーターはこの前番組でもご一緒した宋美玄先生!そして主催の対馬先生!豪華!!さすが東京!!!田舎者にはまぶしすぎるメンツでイベント前に早起きして行った甲斐がありました!ジャニーズのコンサート前に朝早起きして並ぶ若い子の気持ちになりました!

●講演の内容について
今回虐待と対策というテーマですが、上村先生が若者のメール相談を受けていく中で、実際の生の声の積み重ねの中で見えてきた問題点や気付きを中心にお話いただきました。

<相談の中に潜む虐待>
上村先生は子供や学生向けへの講演の際「困ったときにまず相談するのは友達なのだから、みんながちゃんとした知識を持っていないと、友達を助けることができない。性の問題も、DVの問題も、友達しか見つけられないし、助けられないから。だから、自分には関係ないと思っても、今日の話はしっかり聞いてくださいね。」とまずお話するのだそう。そうすると生徒の聞く姿勢が変わるのだとか。
思春期は親離れの時期でもあり、親に相談するとは限らない。携帯メールやネットでは、正しい知識かどうか分からない。全員を一つのシステムで助けることは難しいと先生。

そして相談の中でも、月経不順や自律神経失調症、緊急避妊などの中に、虐待・性虐待の問題が背景に潜んでいることがあるそうです。
そして家庭内に問題が有り、家族が加害者になっている場合だれにも相談ができず被害者がひとり苦しむことが多いとのこと。
近親者からの性被害がある場合、その82%がDV家庭と言います。
子供への被害の輪を広げないためにも、早期のDV予防啓発の必要性を強く感じます。

そして家庭内だけではなく、性的被害と言う点では、10代女性のメール相談者の36%が性的被害にあっているそうです。
加害者は彼だけではなく、家族や塾の先生、SNSで会った人などにも及びます。
かなり多いですよね。これがなかなか顕在化しないけれど、現実起きていることなんです。
私には想像がつかないけれど、そんな辛い経験をされる子供たちが声をあげられずにいると思うと、心が痛みます・・。

<問題への向き合い方>
避妊を嫌がる男性に、「赤ちゃんができたらもっと仲良くなれるから」と言われて「この人に愛はあるのでしょうか?」と悩む人もいます。
「この人なら一緒に育てられると思うことが大事。若年妊婦カップルには、なぜ今出産したいのか、出産するためには何が必要か、出産後はどのような生活にしたいか(だれと育てるのか、どこで育てるか、育児にかかるお金、生活費はどうするか、誰の援助が必要か、自分がお腹の赤ちゃんだったら親に何を望むか?)を出産計画書として2人に書いてもらいます」と先生はおっしゃいます。
ただ頭ごなしに「無理だ」「だめだ」ではなく、問題に向き合いさせて、当事者同士が自己決定していくことが大事なのですね。

<母親から子供への虐待>
そして、母親の子供への虐待につながりやすい因子として、精神的疾患、夫の育児への普協力、未婚・経済的不安定などがあるそうです。
虐待の連鎖という点では、実際は約3割程度と言われるそう。7割の人は虐待を連鎖しない生き方を選びます。
その分かれ道は
・その人の話を聞く人の存在
・自分の話すことをきちんと聞いてもらい、話を信じてもらえた経験
・日常のケアがある(衣食住そろっている)

ことだそう。

逆に、虐待をしてしまう人の子供時代を振り返ると、約8割の人が被虐待経験をもっていると先生。
愛された経験、大切にされた経験がない、どう人に関わっていいのか分からず、「自分を大切にして!」と思い、無条件に愛される愛着の関係を探していると言います。
それをケアする立場の人としては、「傾聴」「受容」「共感」が大事と先生。

そして話はDVに。

<DV/デートDV>
上村先生のクリニックでは、問診の際に、DVの悩みがないかをたずねるDV問診表をつけているのですが、18歳までの初診で約10%にデートDVが見つかっているそうです。
中絶、性感染症、緊急避妊で罹る患者さんの多くは、背景にDV/デートDVがあると言います。
見つけた後は、スタッフが慎重に対応し、場合によって電話相談を紹介したり、本人からの依頼で他機関への紹介をしているそうです。そこまで病院がやってくれるとは、本当に上村先生の正義感でどれほどの人が救われているのかなと思います。

結局デートDVを防ぐには、予防しかなく、小さい内からお付き合いについて話しておくことが重要と先生。
家庭では、万が一DV傾向の強い人と関係が深くなりそうな時も、子供が自分自身で踏みとどまれる自己肯定感を持たせることが大事なのではと思います。(そのために話を聞いてあげたり、あなたはあなたのままで素敵よ、自分が嫌なことは嫌と言っていいのよ、と伝えるとか・・)
実際、嫌なことがあって、自分で問題を定義し、解決をできる子が次同じことを繰りかえさないので、問題が起きたときでも、情報やアイディアを与えながら、何が問題なのかを忍耐強く考えさせることが大事だそうです。

そして悩んでいる子供への対処で大切なこととして、
・その瞬間、その時に悩みを相談できる
・指導しない、怒らない
・いつでも味方でいる
・正しい判断や知識を持っている
・共感し、寄り添ってあげる

ことと先生。

でもリアルタイムで相談に乗ってくれる人もいないし、面と向かって話ができないので、ネットや掲示板やメールに流れてしまうという問題点を先生は指摘します。

家族計画協会でも思春期・FPホットラインを設けていたりするけれど、もっと身近に相談できる機関の必要性を感じます。先生のいらっしゃる岡山で、これだけの数があるのだから、日本全国で見ればもっともっと多いはず。SNSサイトもあるけれど、素人同士か、専門家からメッセージをもらえる時はお金が発生するのがほとんど。仕組みを作ってもどうPRするかでもハードルがある。うーん、でも何とか考えたいな。

<ディスカッション>
そして宋先生を交えてのディスカッションでは、望まない妊娠、感染症で悩む人が後を絶たない背景として、あまりにも知識が少なすぎる、そしてコミュニケーション能力や自己肯定感が少ないと宋先生が指摘。
ただ支援せずに非難しても何の問題解決にもならないのも事実と先生。
私としては、分かっているけどできないことに対する支援を何かしらしていけたらいいなと思いました。

そして虐待に関しては、育児を楽しむどころか、孤軍奮闘して心に余裕が少なくなってしまう母親が多く、ネットの掲示板などにも間違った情報が横行していて、更にそこには他者批判も多いそう。

子供もそうですが、母親をはじめとする大人達も気軽に相談できる場所があるといいですね。

マドレ・ボニータのワーキングマザーサロンが正にそんな取り組みをしていますので、見てみてください★

今回も長くなってしまいましたが、皆さんの参考になれば幸いです!


上村先生の次回講演は、北区のセミナーがまた7月15日に開催されます!お申し込みは6月26日まで!私も参加します★
そして上村先生が性感染症についてまとめた若者向けの教材、STIカフェはこちらから立ち読みできます!

上村先生のtwitter:kamishige0315