紅葉前線はようやくにして古都へとたどり着いた
その中でも先駆けて錦秋を迎えた高雄の地を今年も訪れることが出来た
この地も前夜は雨が降っていたようだ
清冽さを増したように見える清滝川の川面を色づいた紅葉が染める
雨露に濡れたカエデは朝から色っぽくて困る
潤いを含んだ紅色は艶めかしくて美しいからドキッとしてしまう
そんな高雄の紅葉が見られただけでも早起きして訪れた甲斐があったというものだ
そして神護寺の境内に入ってゆく
この神護寺のある高雄の地は平安王朝の時代から紅葉の名所として名高い
そんな”紅葉の聖地”に入ってゆくときには敬意と緊張と期待が入り混ざった気分になる
しかし一度入ってしまえばもう後はひたすらに紅葉を愛でるだけだ
高雄のカエデ独特の発色というか「神護寺の紅」に身も心も染め上げるのだ
毎年同じことを言うようだが神護寺のシンボルはこの大階段であると信じている
この巨大な石段とその両脇に侍すカエデ、そして階段上の金堂と青空が一つのセットなのだ
私にとってはこの秋景を見ることによってもみじ狩りのスイッチが入るようなのだ
石段は舞台でもある
紅葉に見守られて通り過ぎる人々は年齢も性別も国籍さえも異なる
この季節に限っては実は我々参詣客こそが脇役なのかもしれない
清滝川の川畔から楼門へと続く参道は長い石段が続く
そして境内に入り御本尊のおわす金堂までたどり着くにもこんな大石段を登らねばならない
しかし登り切ったなら是非後ろを振り返ってみることだ
高雄のカエデたちが汗をかきかき参詣したあなたに惜しみない拍手を送っているのだから
山を巧みに利用した境内をとことこ回り”かわらけ投げ”も済ませれば
晩秋の太陽がちょうど真上に昇っている頃だ
参道にいくつかある茶屋からは腹の虫をグウと鳴かせる香りも漂ってくる
私もいつもの茶屋でいつもの蕎麦を所望することにした
本当に何気も無い蕎麦なのだが、妙に美味く感じられるのは一体何故だろうか
その謎を解き明かすべく、また来年もここからもみじ狩りを始めるのだろうと思った
撮影地:高雄山神護寺、清滝川周辺(2017年11月11日)