今年のノーベル物理学賞の発表があった翌朝、
実家の母から、興奮気味に電話があった。
なんと私の従姉が嫁いだ家の舅の兄、
彼女の伯父にあたる人だと言う。
いやぁ、驚いた。
彼女が医者と結婚した事は、
前から知ってはいたのだが、
医者の一族だと聞いていたので、
受賞された真鍋淑郎さんとは結びつかなかった。
母は彼女の母親である妹から、
名前も含めて詳しく聞いていたそうで、
ニュースになった時にすぐ分かったと言っていた。
だが、残念ながらその叔母夫婦も、
従姉の舅夫婦も、既に亡くなっていると言う。
叔母は今年の春に亡くなったので、
もう一年早かったらどれだけ喜んだろう、と、
母がいたく残念がっていた。
気象学が、物理学賞の対象になったのは初めてで、
それ自体画期的ではあるが、
それ以上に、
温暖化の原因がCO2などの温室効果ガスである事を、
科学的に証明した事が凄い。
我々が無自覚に放出し続けてきたCO2が、
気温の上昇を生み、
地球規模で危機に陥っていることに、
いち早く警鐘を鳴らして下さった事で、
地球全体の救世主となったのかもしれない。
今、世界中で力を入れているSDGsは、
真鍋さんらの研究が無ければ、
あり得なかったと思う。
皆がこのままでは地球が危ない、という危機感を持つようになり、
真剣に対策をすることによって、
少しでも改善できれば···
真鍋さんの経歴が衆知されることによって、
もう1つ、提起された問題がある。
それは頭脳流出問題だ。
日本の研究者は、本当に冷遇されている、と思う。
彼らは高給が欲しいわけではなく、
研究に専念できる環境が欲しいのだ。
だが低賃金であれば、
生活の為にアルバイトなどもせざるを
得ず、
当然、そちらに時間と労力が奪われる。
そういう時に、外国から、
生活の心配をしなくていい給料と、
潤沢な研究資金と設備環境を提示されたら、
行ってしまうのは当たり前だと思う。
真鍋さんの時代よりはマシになっている、と言う、
今の研究者もいたが、
大学が独立法人になって、
給付金もカットされ、
研究に金をかけて貰えない状況は、
一時期より悪化しているように見える。
特に、すぐ成果に結びつかず、
必然的に収益に繋がらない基礎研究は、
随分ないがしろにされている。
国は研究開発費をケチって民間に投げようとするが、
それこそ民間は営利目的の企業なのだから、
お金にならない基礎研究になど力を入れるはずもない。
で、日本の頭脳はどんどん流出してしまう。
それともう1つ。
1997年に、科学技術庁(現文科省)のプロジェクトに参加する為に、
1度帰国されて日本で研究をしようとされたのだが、
役所の縦割り行政に、
他の研究機関との共同研究を阻まれた事に嫌気をさし、
4年で再渡米されたらしい。
役所の縦割り行政!
さもありなん、と思うが、
そんなつまらない役人のこだわりと縄張り意識で、
貴重な頭脳を再び手放してしまった訳だ。
それだけでも大問題だが、
欧米が多かったこれまでの頭脳流出と違い、
これからは、中国に持っていかれてしまうだろう。
日本が、使うべきお金と守るべき人材を、
ちゃんと考えて手を打たなければ、
単なる流出に留まらず、
害になることだってあるかもしれない。
文科大臣は受賞を称賛し、
岸田総理はこれ見よがしにオンライン面会の様子をマスコミに撮らせていたが、
そんなパフォーマンスより、
真鍋さんが言われている、
日本の子供達、ひいては日本の科学者の為の提言を、
もっと真剣に聞いて、
これ以上日本の科学力が落ちないような対策を、
早急にやって欲しい、と思う。
にしても真鍋淑郎さん、
研究成果もさることながら、
世界中の自然科学者など、
これまでノーベル賞の範疇外と思われてきた研究をしてきた人達に、
夢を与えた、という点でも卓越していると思います。
90才とはいえ、まだまだお元気そうなので、
温暖化を食い止める為に、
力を尽くし続けて下さい。
ノーベル物理学賞、本当におめでとうございます。