※ネタバレあり
『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』鑑賞
ダニエル・クワン監督
ダニエル・シャイナート 監督
映画や舞台鑑賞の際はストーリーに関する情報をなるべく得ず観るようにしている。
だから『エブエブ』は、自分の想像と違った滑り出しで「こんな話だったの⁈」とちょっと頭の中がジタバタ、驚いた。
でもキー・ホイ・クァン演じる"ウェイモンド・ワン"の緻密な演技、そしてシチュエーションに合わせた変幻自在な表情を見るにつけ、作品に集中できるように。
とくに野暮ったいウェイモンドから、カンフーをこなす"別人ウェイモンド"への素早い身のこなしは感動した。
ジェイミー・リー・カーチス演じる"ディアドラ・ボーディアドラ"
体の造形を変え、ワイヤーアクションを駆使してカンフーに挑戦している。えっ!壁に頭を突っ込む⁈プロフェッショナルの真髄を見て、一人の存在が映画のスケールに匹敵するパワーを放出していて格好良かった。
そして母娘(ミシェル・ヨー/ステファニー・スー)が石となり語り合うシーンには心を掴まれた。
突飛な映像が映し出され、おかしくて吹いてしまったけれど、広大な景色と石ころが交わす会話は、マルチバースにジャンプアップし続ける巧みな映像よりも衝撃が走った。
〈解放と開放〉というメッセージが込められていたのか。真意は分からないけど、観る側に情報を提供するだけじゃなく、考える瞬間を与えてくれたことが、今、壮大なテーマの映画を観に来たんだなと実感を湧かせてくれた。
象徴的に出てくるベーグル。
穴の向こうは"虚無"?
新しく挑戦的な映画を観たことは間違いない、と思っている。