否定ばかりする人の3つの共通点

以前、こんなことがありました。

ある人(Aさん)から、ある課題解決のための企画を出してほしいと頼まれたので、いくつか企画を考えて提案しました。でもどの企画も「ダメ」「難しい」「それはできない」という反応ばかり。否定ばかりでした。

もちろん企画そのものの良し悪しはあるので全部ダメでもしょうがないこともありますが、私がムッときたのは、その否定の理由です。提案した企画の重箱の隅ばかりを否定しながら企画全体をNGにしてくるわけです。

なんでも否定する人っていますよね。是々非々で内容を吟味して判断しているのではなく、どんなときもいつも否定ばかり。ある意味ブレてないのですが、相手からしたら迷惑です。

なぜこうも否定ばかりなのか? 理由は大きく分けるとこの3つではないでしょうか。

(1)マウントをとろうとしている。相手を否定して、自分の優位性を保とうとしている。
(2)相手が自分より評価されそうなので、負けたくないというコンプレックスからくる。
(3)自己肯定したい。

結局は、「自分はすごい」ということを自分にも、相手にも伝えたくて否定しているってことなんだと思います。でも残念ながら、否定ばかりの人はまわりから「すごい!」とは見てもらいにくく、むしろ逆の印象を強めていることがほとんどです。

否定は意識的にやっている人もいますが、無意識にしている人も多いようです。なので、すぐ否定してくる人があなたにとってある程度信頼できる人であれば、相手に「なんでも否定していますよ」と伝えてあげるのも一手です。

 

 

私も以前、否定ばかりする人がいたので、本人にそう伝えたところ、自分がそうしていることにまったく気づいていない様子で本人が驚いていたなんてことがありました。

無意識でやっている人は否定が思考のクセになってしまっているので、本人だけではなかなか直せないのかもしれません。ただ、実際は相手との信頼関係がないケースのほうが圧倒的に多いでしょう。そのときはどう否定する人に対応したらいいのでしょうか。

否定してくる人の特徴のひとつに「部分否定」があります。「目的・ゴールに向かうための否定」ではなく、「好みや思い込みをベースにした部分的な否定」です。そういうときは話を広いところにもっていきましょう。部分的な話を続けると、否定する人の思うつぼ。その部分で「ああでもないこうでもない」と話してもラチがあきません。一歩間違うと、感情の戦いになってしまうこともあります。一刻も早く、話題をずらすべきです。

私も意識していないと、ときどきドツボにはまることがあります。ゴールを達成するために打ち合わせをしているはずなのに、気づけば細かいことで白なのか、黒なのか、みたいな議論をしてしまう。これだと時間がもったいないですよね。

スムーズに話題をずらすコツは「ゴールの確認」をすること。否定してくる人との話は常にゴールを意識し、ゴールに向かっているか、いないかを確認しながら進めていくのです。

このときにおすすめしたいのが「ホワイトボードの活用」です。面と向かってだと「その話、打ち合わせの目的からズレてますよ」と言いにくいこともあると思います。ホワイトボードを使い、あなた自身が書記になり、ボードに大きく「今日のミーティングのゴール」をまず書きます。言語化されたゴールがミーティング中にいつも見える状態であることがポイントです。

「否定」が来ても、「そうすると、ゴールを達成するために具体的にどうしたらいいですかね?」と聞き返しやすくなります。

返答で相手をうまく肯定してあげる

もうひとつ、すぐ否定する人へのおすすめの返答法があります。会話例で紹介します。

Bさん「この企画、どうでしょうか?」
Cさん「うーん、この企画は難しいね」
Bさん「でしたらどんな企画だといいのでしょうか?」(まずは代案を質問する)
Cさん「●●な感じの企画がいいんじゃないの?」(あいまいな代案が出てくる可能性大)
Bさん「なるほど!そういう企画もありますね! Bさんの企画もすごいと思うので、僕の出した企画とかけ合わせた企画にするのはどうでしょうか?」(まずは全肯定する。そして、どちらかの企画に優劣をつけるのではなく、両方いい案なので、企画のかけ合わせを提案する)

 

 

なんでも否定する人の理由で書いたように、否定するのは「自分の優位性」「負けたくないコンプレクス」「自己肯定」です。そこの部分を満たす返答をすることで、相手はもうNOとは言いにくくなるはずです。
なぜなら否定する理由がなくなるからです。

なんでも否定する人など、ちょっと面倒な人にどう対応したらいいかを考えるときに役立つのが「伝わる構造」です。「伝わるとはどういうことか」の構造を理解しておくと、さまざまな場面に応用ができ、たとえば面倒な人にどう対応するかを考えるときにも大きな武器になってくれるはずです。

否定は必ずしも悪いわけではない

一方で「否定」にはいい部分もあります。否定によってさまざまな課題を発見できます。私は編集の仕事をしていますが、意識的に「否定」を活用していて、これを「性悪視点」と呼んでいます。

たとえば新しい企画を考えるとき。意識的に「否定的な視点」「いじわるな視点」でその企画を多面的に見ていくようにしています。どうしても人は自分に甘くなりがちです。私自身も、新しい企画のアイデアを考えたときには「これはすごい企画だ!」と自画自賛してしまいます。

でもそのあとに意識的に「性悪視点」でその企画を見ていくと課題がどんどん湧き出てきます。その課題を解決しながら、企画を仕上げていくことで、より魅力的で強度のある企画が生まれます。

 

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以前、ある会社で「お店の悪口を募集」したことがニュースになったことがあります。これはかなり勇気のいる行為だと思いますが、「否定」を商品やサービスの改善に役立てようとする企業は多々あります。

もともと人間の脳はネガティブなものにフォーカスをあてやすくできています。

たとえば、「好きな食べ物はなんですか?」という質問をするとすぐに答えが出ない人でも、「嫌いな食べ物は何ですか?」と聞くとすぐに答えが出ることがあります。嫌いなもののほうが、より強くインプットされているからです。ポジティブ思考になるためには意識や練習が必要と言われるのもそのためです。

そう考えると「すぐ否定する人」がいることも理解できる部分もあります。だからといって面倒な人であることに変わりはありません。ぜひ対応策を身につけてください。

また一方で、自分が「すぐ否定する人」にならないように気をつけたいところです。「己の欲せざるところは人に施すことなかれ」これは孔子の言葉ですが、孔子が弟子から一生努力をしなければならない言葉を何かもらえないかと頼まれて、与えた言葉だそうです。

自分にしてほしくないことは他人にするな。「すぐ否定してしまう」ことは無意識に自分もやってしまうかもしれません。対応策も大切ですが、自分はそうしないということを意識することも必要なのかもしれません。