※ここから先は 私の独断と偏見で無い知識と文才をいかして好き勝手かいてます
それでも読んでみようかなった方だけ
下へ(笑)
あまふらせたんまいな 2夜 ~手探りな灯り~
「咲…?咲…咲!…咲!!……」
何度か 咲と呼ばれる少女の体を揺さぶる彩 でも咲が眼を開ける事は無かった
泣くことは無く ただその場に蹲る 体がひたすら重くて
冷えて行く体をただ抱きしめるだけ
「………き…」
視界にぼんやりと天井が映る 妹が死んだ時の夢 微かに手が冷えて感じる
ふいに嫌な予感に彩は子供に眼をやる ゆっくりと呼吸をしているのか穏やかな顔で眠っている
彩は胸を撫で下ろすと そのまま起き上がり 外に出た
明け方は どこかしんなりとしていて 彩はこの時間が好きだった
微かに落ちてくる霜を全身で受け止める
「きゃっ」
背後から足に何かがぶつかった様な衝撃にふらつくと そこにはさっきまで寝ていた子供が
彩の足にしがみ付いている 眼が覚めたのか くり貫かれたような大きな眼を瞬きさせると彩の着物を重心に背伸びをした
「起こしちゃった?」
「起こしちゃった」
じゃれる様にはしゃぐと彩の言葉をそのまま鸚鵡返しする
「そうだあなたのお名前は?」
視線を合わすようにしゃがむ彩に困ったように小首をかしげる
訳ありなのは何となく分った 視線をそらしてしまうと 眼をきょろきょろと泳がせている
“分らないの?”彩が口をあけようとした刹那
「…あき」
「あきっていうの?」
聞き返すとこくこくと頷く その顔は必死さを感じたものの嘘をついている様には見えなかった
それにこの子が無事であれば 何者でも関係なかった
「あき お腹すいた? 何か食べる?」
彩が聞くと あきは満面の笑みを作り 再び彩にしがみつき小刻みにジャンプするのだった
あきは出されたものを不思議なものでも見るようにでも全部食べた お世辞にもそれは美味しいと言えるものではないのに
でも笑顔だった
「彩 問屋さんにこれを持って行ってくれる?」
母が出したのは 草を編んで作った草履だった
彩が出ている間 少しずつ作っていたのだろう
「少しだけど 食べ物の足しになると思うから」
「お母さん…わかった ありがとう」
彩が出かける支度をすると うとうとしていたあきもぱちっと目を覚まし
寝ていればいいのに あきも行くと再びしがみつき 寝ていなさいと説得を企見るも母の
「いいじゃない 彩になついているの 連れて行ってあげて」と母の言葉と手を離さないであろうあきに折れることになった
「あきちゃん」
いざ出かけようと 戸に手をかけると 母の呼び声
母の手には小さい草履があった
そうだ このこ裸足だった 何も考えて無かったから今あらためて あきが裸足だと気付いた
「あき おいで」
母はあきを座らせると スムーズに足に草履を履かせる サイズが合うのか
馴染んだ様にはしゃいで動くあきの足と一緒に揺れた
「ねぇ あき アナタは…」
何処から来たのって聞こうとして その先言葉が出てこなかった 言葉を飲み込むともう何も言わないで
ただただ歩いた あきも手をぎゅっと握って その先を聞こうとはしない
結局 店に着くまでずっと無言だった でも手を握るあきの力が弱まることは無かった
「ひさしぶりだね 彩ちゃん お母さんの調子はどうだい?」
「ありがとうございます だいぶ良くなりました」
店の旦那に頭を深々と下げると彩の背中にすっぽり隠れているあきの頭に軽く手を置き
頭を下げてと小さく囁いた
「もしかして その子噂の子かい?」
旦那が興味深げにのぞくと びっくりしたのかあきはますます背中に隠れてしまい 彩が慌てて謝ると
旦那は笑顔で いいよいいよと手を振るのだった
草履は少量のお金とお米と交換してもらえた それでも彩には十分な量だった
「これ 今日の飯の足しにでもしておくれ」
帰り際に店主が渡してくれたのは 巾着いっぱいの粉末
「玉蜀黍の芯らしいけどね 木の皮よりよっぽど美味い!! どこぞの牛の食いかすって聞いたら腹も立つがね」
旦那の可笑しな怒り方に彩も とても腹の立つ話を聞いてる気はしなかった
あきも 気付けば顔をのりだして 不思議な顔で話を聞いていた
帰り際彩は何度も頭を下げると 店を後にした 後は振り返らなかった 何となく 何となく
「あき 私まだ拠る処があるのお母さんと待っていてくれる?」
彩がそういうと慣れない草履につかれたのか あきはあっさりと頷いたえ
彩が向った先は いつもの祠 あきと出会った場所
いつもの様に祈る姿勢をとり 眼を見開いた 中心に置かれていた小さい人形が無い
落ちたのか誰かが悪戯をした? 彩は周囲を確認するも結局見つかることは無かった
とりあえず 探すだけ探して 水をくんで帰る頃には日も傾いていた
家では 母が 玉蜀黍の粉末をスープのようにしていた 中にお米が一緒に入れられていて雑炊みたいになっていた
お水を置くとお帰りとしがみついてくるあきを抱き上げた 軽さに猫でも抱き上げたような気分だった
いったん人形のことは忘れ あきが火傷しないよう食べさせた 彩自身は小食で自分の分もあきにわけてあげた
昔から小食では無かった様な そんな思考がよぎるも すぐに消えていった
皆が寝静まった後も無くなった人形の事が頭から消える事は無かった
あきは静かに眠っている 静かすぎて 死んでるんじゃないかとか 何度か思いながらも
彩も何となく重い体にゆっくりと眠りについた