1614年にドイツで「全世界の普遍的かつ総体的改革」とその付録「友愛団の名声」で人々を救済する友愛を謳った「薔薇十字団」の存在が初めて公的に示唆されました。(それ以前から薔薇十字団らしき秘密組織の存在があるという噂があったようです。)
薔薇十字団とは、ドイツのクリスチャン・ローゼンクロイツ(Rosenkreuzer)という伝説的な人物が「薔薇十字団」創設したと言われている秘密組織です。
クリスチャン・ローゼンクロイツとは、ドイツの神学者、ヨハン・ヴァレンティン・アンドレーエ(Johann Valentin Andreae)が書いた「化学の結婚」(ChymischeHochzeit,Christiani Rosencreütz)に登場します。
化学の結婚には、主人公のローゼンクロイツが王(硫黄)と女王(水銀)の融合による錬金術の奥義が象徴的な暗号によって書き記されています。
クリスチャン・ローゼンクロイツはドイツの貴族の家系に生まれ、5歳の時に修道院に入ってギリシア語とラテン語を学びました。16歳の時にエルサレムへ巡礼に向かう途中にアラビア半島の賢者について聞き、ダムカルへ向かうことになります。ダムカルの賢者たちは彼こそが長きに渡って待ち望んでいた人物であるとし、アラビア語を始め、数学や自然科学など古代アトランティス以来、秘密裏に伝承されてきた叡智を学びます。その後にモロッコへ行き、様々な知識を習得した後にドイツに帰国し、3人の盟友と4人の仲間とともに友愛団を結成したとされています。
〜薔薇十字団の教義〜
一、我々の活動は無報酬で病人を治療することで
ある。
一、我々は特別な服装をしない。
一、我々は毎年「精霊の家」で会合する。
一、同志はそれぞれ後継者を選ぶ。
一、ローゼンクロイツの頭文字のR・Cが我々の
紋章であり、バッジである。
一、同志団体は百年間、存在を公開しない。
クリスチャン・ローゼンクロイツの秘密の墓へと繋がる扉の上には、「我は120年後に名乗りあげるであろう」(Post CXX ANNOS PATEBO) と記されており、永遠に消えることのないランプに腐らない遺体が照らされていたらしいです。
哲学者のデカルトは薔薇十字団に入団する為に苦心しましたし、ヘーゲルの「法哲学」に十字架中にある薔薇という表現が出てくるように哲学者を始め、医者や科学者や大学教授など当時の知識階級の人々は、数々の謎めいた伝説に彩られた薔薇十字団の存在に強く惹かれました。
「薔薇」(東洋の叡智)と「十字」(西洋の精神的支柱であるキリスト教)を融合したものが薔薇十字団の象徴的な意味です。彼らの存在は錬金術を語る上ではなくてはならない存在であると同時に後のフリーメイソンなどの秘密組織にも深い繋がりがあり、現在、そこら中に溢れている秘密めいた象徴になっています。