『True』は、L'Arc〜en〜Cielの4作目のスタジオ・アルバム。1996年12月12日発売。発売元はKi/oon Sony Records。
前作『heavenly』以来約1年3ヶ月ぶりとなる4作目のスタジオ・アルバム。翌1997年11月4日をもってドラマーのsakuraがL'Arc〜en〜Cielを脱退したことから、本作がsakura在籍していたL'Arc〜en〜Cielが発表した最後のアルバムとなりました。 収録曲には、1996年7月から立て続けにリリースしたシングル「風にきえないで」「flower」「Lies and Truth」の表題曲を含めた10曲が収められています。また、本作で初音源化となった楽曲「the Fourth Avenue Café」は、本作発売から3ヶ月後となる1997年3月にシングルカットされる予定となっていましたが、同年2月にsakuraが覚醒剤取締法違反で逮捕されたことに伴い発売中止となっています。ただ、本作発売から約10年後となる2006年8月に、バンド結成15周年を記念し、8cmシングルとして発表していた1stCDシングル「Blurry Eyes」から14thCDシングル「forbidden lover」の14作品を12cmシングル(マキシシングル)で再発売する企画が実施され、この再販に合わせシングルカットされることとなりました。
本作の音楽性としては、前作までと同様に、L'Arc〜en〜Cielのルーツである1980年代のニュー・ウェイヴやポストパンク、ゴシック・ロックを下敷きとしています。ただ、今回のレコーディングでは、新たにストリングスやホーン、そして前作まで以上にアコースティック・ギターの音色を大々的に導入しています。さらに、「Caress of Venus」ではシーケンサーソフトによる打ち込みを多用している他、sakuraは「Lies and Truth」のレコーディングで新たにエレクトリック・ドラムを導入しています。楽曲制作に使う楽器が多様化したこともあり、ネオアコやホワイトソウル、ハウスの雰囲気のある楽曲が今回制作されています。特にkenが作曲を担当した「Lies and Truth」や「the Fourth Avenue Café」では多くの管弦楽器が取り入れられています。本作発売当時のインタビューにおいてkenは、管弦楽器を取り入れた音楽として、スタイル・カウンシルやフィッシュボーン、アビー・リンカーン、スウィング・アウト・シスターなど、様々なジャンルを好んで聴いていたと述べており、こういったアーティストの影響が本作に反映されていることがうかがえます。また、本作発売当時のインタビューでhydeは「個人的にここ1年ぐらい聴いてたのは、レディオヘッドとかアトミック・スウィングとかクランベリーズとかで。で、今回バンドでやりたいって思ったのは、よくCD屋さんとかで外国の音楽を試聴すると、歌が入る前から曲に引き込まれることがあるんですけど、そういう、"聴く人を包み込むようなサウンド"にしたいなと思ったんです」と楽曲制作の方向性を語っています。結果的に、1枚のアルバムにバラエティに富んだ様々な楽曲が収録されることとなりましたが、アルバムのバランスという点について、tetsuyaは「(アルバムは)逆に統一感なくてもいいやって思ってた。一曲一曲をかっこよくすればいい」「各曲の仕上がりや雰囲気が違っても、トータル的なバランスはL'Arc〜en〜Cielになったという自信があった」とコメントしています。
さらに、本作の楽曲制作では当時の日本のメジャーな音楽シーンを意識し、"メロディ志向で制作する"というアプローチも取り入れています。前作までの曲作り方法から転換し、ポップに伝えるための方法論を模索したといいます。ちなみにkenは、自身の思い描くポップ・ミュージック像について、後年のインタビューで「特殊なものが整合性を持った時にポップになると思っている」と述べています。ただ、メロディアスなポップ・ミュージックをアルバムに集めたことにより、インディーズ時代からのリスナーからの不満の声が当時あがったが、本作発売当時にtetsuyaは「僕たちのことを何も知らなかったんだ。僕と価値観が合わない」とコメントしている。また、hydeは後年に受けたインタビューで本作制作当時を振り返り、「僕らにやりたいことが山ほどあったから、ここでポップな曲での攻撃を覚え始めた」「すごくバランスの良い、できたアルバムだなと思う。L'Arc〜en〜Cielの前期の集大成」とこの作品を表現しています。 こういったセールスを意識した制作に舵を切った背景には、前3作のセールスが思ったよりも伸びなかったことが起因しており、kenは後年に受けたインタビューで「L'Arc〜en〜Cielが売れねえっていう声が聞こえた時、当時自分が一番曲を書いていたから、"曲が悪いんだろう"、"俺が悪いんだろう"、"そりゃ売れねえの作ってるよ、俺は"と思っていた。だから"じゃあ売れるの作りましょうか"っていう気分で制作にあたった」とコメントしています。
発売初週の1996年12月23日付のオリコン週間アルバムチャートでは、初登場2位を獲得している。発売翌週には週間6位、発売翌々週には週間3位、さらに次の週にも週間3位を記録し、発売5週目となる1997年1月27日付のオリコン週間アルバムチャートでシングル・アルバム通じて自身初となる首位を獲得した。首位獲得後7週連続、通算では12週連続で週間TOP10を記録し続け、チャートに合計110週にわたりランクインし、L'Arc〜en〜Cielのアルバム作品としては最長のロングヒットを記録した作品となっています。また、シングル・アルバムを通じて自身初となるミリオンセラーを記録しています。
このアルバム聴いた時は、びっくりしました。本当にポップに突き抜けた感じがして、バラエティに富んだ内容で。打ち込みやストリングスを多様して色々新しいことをやってるにも関わらず。これより前はちょっとアンダーグラウンドでマニアックな香りがしていて、これ以後はだいぶ、ポップで日本を代表するバンドになったので、そこへ上昇カーブを描いている感覚が何ともドラマティックに感じていました。売れ方もドラマティックだったし。
ちょっと苦しい出来事もありましたが。僕はラルクの最高傑作と思っていて、90年代でも指折りの作品だと思っています。