こんにちは!桜の季節ですが、アストラハンでは残念ながら日本のような見事な桜並木は見られません。

 

 数日前、ペテルブルグで未曽有のテロ事件が起こりました。犯人はキルギス出身のイスラム過激派関連だといわれています。ロシアではもちろん、日本でも大ニュースになっているようですね。

 死者も出て、今なお事態が収まっていないという痛ましい事故です。

 これと時期を同じくして、なんと私の住んでいるアストラハンでも警官二名が射殺されるという事件が起こりました。いつも平和な町だけに、信じられない思いです。しかも、事件が起こったのは大学のすぐ横の通り沿いでした。犯人グループはすでに捕まったようですが、町では警戒態勢に入っており、今日も授業の前に、学部長から、外出の際は必ず身分証を携えていくように、夜中に街を歩くのはできるだけ避けるように、とのお達しがありました。

 私の友人も、一昨日パスポートを持たずに町の中心部を歩いていたら、警察官に職務質問を受け、数時間にわたって拘束されました。事件から数日が経ち、やや落ち着きをとりもどしてはいるものの、いまだに緊張状態にあると言ってよいでしょう。

 

 さて、これら一連の事件(ペテルブルグとアストラハンの事件の関係性について明確に言及されている文献は今のところありませんが)の背景には、中央アジア系のイスラム勢力がある、と言われています。今後の記事で言及していくつもりではありますが、中央アジア諸国はすべてイスラム教の国です。日本ではこれらの国々の情報が少ないため、中央アジアとイスラム国などの過激派を結びつけて考えてしまうかもしれません。

 しかし、これは大きな間違いです。中央アジアはイスラム教が信仰されているとはいえ、実際のところイランやトルコに比べ、かなり緩い信仰です。特に、カザフスタン、キルギスでは国民の大半がムスリムとされているものの、彼らの中には飲酒や豚肉食、自由恋愛などをする者が少なからずいて、それが容認される環境にあります(トルクメニスタン、ウズベキスタンでは敬虔な信者が多くいるようです。) つまり、中央アジア=イスラム過激派という発想は安直である、ということです。もちろん、彼らの中には過激派もいるでしょう。しかし、それはいわば、アフリカ人=貧しい、だとか、日本人=仏教(これは外国人がよくそう考えています)という図式と同じようなものです。中央アジアに関する情報が少ないがために、危険地域とみなされてしまうのは少々残念です。 

 アストラハンのムスリムも、一日5回の礼拝を欠かさないムスリムもいれば、アル中のムスリムまでいます。これはどの地域にも言えることですが、宗教は一言ではかたづけられないのです。ロシアは、キリスト教(ロシア系、ウクライナ系)、イスラム教(中央アジア系、タタール系)が折り合いをつけてなんとか一つに収まっている国であり、それぞれの宗教について深く触れるということはタブーです。そんなわけなので、当然ですが「ムスリムに気を付けよう」などといったプロパガンダは出されません。

 

 そもそも、中央アジア諸国は世界屈指の他民族地域です。騎馬民族の時代から、様々な背景をもった民族が混在しています。よく調べてみれば、今回のサンクト=ペテルブルグの事件も、犯人は「キルギス系ロシア人」ということになっています。犯人は「キルギスに住んでいるロシア人」なのであって、「キルギス人」ではありません。まあそもそも「キルギス人」が誰を指すのか明確に定義することはできませんが。。

 

 要は、これほど他民族な背景を持つ環境にあるため、たしかに過激派がいないとは言い切れませんが、それはイギリスのロンドンにムスリムの居住区があるのこととそう違いはないということです。外務省の危険度評価でイギリスが危険度0なのに対し、キルギスは危険度1~3とされていますがこれは大いに疑問ですね。私が昨年ロンドンを訪れたときの方が、キルギスに滞在した時よりもはるかに危険を感じました。

 

キルギスは今年の1月末に訪れましたが、とても美しい国です。首都ビシュケク、そして西180キロに位置するタラスという町に行きました(高校の世界史でタラス河畔の戦いというのを勉強しました。あのタラスです)。日本人とキルギス人は、実は容貌が非常に似ており、人々もとても親日的でした。キルギスの印象が悪くなったとすれば非常に残念です。そのうちキルギス旅行についても書きたいといます。

 

ここまで、中央アジアの擁護をしてはきましたが、とはいえ民族のるつぼということは、それだけ何が起こるか想像もできないということを意味するので、今後も気を付けていきたいと思います。