8年前のエントリー「家族を崩壊に追い込むもの」 | 草莽崛起~阿蘇地☆曳人(あそち☆えいと)のブログ

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自虐史観を乗り越えて、「日本」のソ連化を阻止しよう!

政権復帰した自民党の憲法改悪策動、目が届きにくかった「家族」「政策」に再び光を当てて下さった杉田水脈議員に感謝。以下は、2010年1月7日付の旧稿(一部手直し)。

|自民党の「見なおし」論の基調となっているのは、「個人の、
|権利、尊厳よりも家族・共同体・国家への奉仕が優先され
|るべき」という意識です。議論に出席した議員からは、
|「夫婦別姓が出てくるような日本になったということは大変
|情けない」「家族こそが国家の基本」「女性の家庭をよくし
|ようという気持ちが日本の国をこれまでまじめに支えてき
|た」といった発言も見られます。しかし、家庭において個人
|としての女性の人権が抑圧されてきたことが、ドメスティッ
|クバイオレンスや、避妊・中絶・出産等に関する女性の権
|利と健康を損なってきました。そして国家もまた、「産めよ
|増やせよ」という国策のもと、女性の権利と尊厳を抑圧し
|てきたという事実があります。

http://www.jca.apc.org/ajwrc/programs/campaign/details/2004/savearticle24.html
政権交代によって、自民党の憲法改悪策動も一段落。しかし、草の根(?)バック・ラッシャーが同様の論理でジェンダーフリーの取り組みに相変わらず攻撃を仕掛けてきています。

しかし、それは彼らにとっても逆効果であるということをぜひここで学んでほしいと思います。

|離婚の高い国とか女性の雇用率が高い、同棲の多い国とか、
|あるいは、婚外子率の高い国というのが、一番出生率が低い
|と以前は言われていたんですが、しかし、20世紀末、21世
|紀初め、今になりますと、むしろその逆になっています。すな
わち、一番低い出生率、人口動態学者が最低出生率国と定義し
国々、すなわち超少子化の進んでいる国々、1.3を
|るような出生率の国々が、まさしく伝統的な家族という観
|念が強い国々なんです。すなわち、離婚率はそれほど高くな
|い国でありますし、結婚という制度がまだ重視されているよう
|な国でありますし、また、子どもたちは通常、結婚という制度
|の中で生まれています。そして、女性の雇用率もそれほどほ
|かの国と比べて高くないということで、どうも70年代に言わ
ていたことが、今や説明がつかないということで、逆転現象
見られます。
http://arch.asahi.com/sympo/syousika/05.html
上記の発言は、朝日主宰の少子化問題シンポでのイタリアの社会政策学者サラチェーノ氏のもの。彼女の口からは、エスピンアンデルセンの名前は出なかったようですが、サラチェーノさんの解くところは、実は、デンマークの同じく社会政策論が専門のエスピンアンデルセンによる福祉国家の3類型、自由主義レジーム、社会民主主義レジーム、保守主義レジームの比較論と重ね合わせることができそうです。サラチェーノさんが、超少子化国と指摘している国は、おおよそエスピンアンデルセンの分類では、保守主義レジームに当たる国なんですね。そして彼によると、保守主義レジームにおいては、社会福祉が国民一般の権利として政府によって保証される度合いは、社会民主主義レジームほど高くなく、他方民間市場での福祉サービス供給も不十分で、この点では自由主義レジームに劣るそうです。そこで、福祉はもっぱら家族を中心とする伝統的な血縁、地縁の共同体に押し付けられることになるというのです。

しかし、商品・貨幣経済の発展は伝統的な共同体を解体していきますから、社会的モビリティの高まりで地縁共同体は伝統的な形態ではもはや存在しませんし、家族も同じくモビリティへの対応の必要もあって核家族化してきていますから、どだい、家族が国家を支えるなんて無理な話なんですね。しかし、日本の家族は高度成長のおかげもあってなんとか高い貯蓄率や勤労意識の高さ等で、また、図々しくも自民党の誰かさんが指摘したように女性の過重負担によって、ある種のセーフティーネットとして機能してくることができたわけですが、今そのひずみのツケが、たとえば、若者の自立意識の低下という形で、現われているわけです。親(多くの場合、金を父、世話を母)が面倒見てくれるのだから、結婚なんて必要ないし、就職だってパスってことになるわけです。

あるいは、自立を目指しても運もあったりしてうまくいかなかった場合に、実家に逃げ帰る前に、もう少し親に頼らずに頑張るためのサポートシステムがほとんどない、保守主義レジームの場合、つまずいた人はそこで家族のもとへ帰らないとしたら、孤独に餓死するしかないかもしれないわけですね。

家族共同体の強調は、若者の家族依存(自立の遅れ=晩婚化+女性の過重負担)で家族の未形成や崩壊をかえって促進しています。ジェンダー・フリーが日本をダメにした?盗人猛々しいとはよく言ったものです。