商品・貨幣論では、資本主義的生産関係の商品生産関係としての側面に焦点を当て、この生産関係を媒介している(生産関係を形成している人間たちの絆となっている)商品と貨幣について考察した。生産過程論では、資本主義的生産関係の資本・賃労働関係としての側面焦点を当てる。ここで一つ注意すべき事柄がある。資本・賃労働関係は、誤解している人もいるかもしれないが、本質的には、資本家と労働者との関係ではない。根本的・本質的には、文字通り資本と賃労働の関係である。つまり、差し当たっては貨幣として登場してくる資本(労働者に払うべき賃金資金や原材料の購入資金など)と労働者が遂行する労働との関係なのである。
私たちは、この資本と賃労働の関係を、まずは、資本としての貨幣と日常の消費生活で使用されている貨幣との違いという観点から考察していくことになる。