私は末っ子だったので、いつも兄のおさがりを着ていた。アディダスの古い帽子もおさがりだった。そんな私も、新しいものが欲しくなって、阪神タイガースの帽子を買ってもらった。すると、大阪出身の友達となかよくなって、よく遊んだ。でも、小中学校で、ハーモニカやピアニカ、さいほう箱や絵画の道具など、ほとんど兄が使ったものだった。もちろんクラスメイトは新しかった。そんな状況を見かねてか、おじいちゃんは1日100円のおこづかいをくれた。友達にそのことを言うと、「1ヵ月3000円でしょ、こんなぜいたくないよ。」とうらやましがった。小4の時、なぜかピアニカの新しいのが欲しくなって、センプラの楽器店で7000円で買った。当時うちは8人家族で、父も母も必死になって働いていたので、後になって罪の意識はしばらく消えなかった。高校を卒業したあと、親せきのおばさんがやってきて、「使ってないピアニカある?」と言ってもっていった。あのピアニカは大切に使ったので、キズ1つ無かった。だから使わなくなっても「持っていかれた」感がハンパなかった。誰にでも人には言えない心のキズはある。