「20世紀最後の巨匠」とも呼ばれたヴァイオリニストのイヴリー・ギトリス氏が12月24日に98歳でお亡くなりになったと、25日のニュースで知りました。
生で聴かせていただいたのは一度きりでしたが、直接語りかけられているようなその音楽に、
なんでこんなに心の近くで聴こえているのだろう!
と胸を締めつけられたのを覚えています。
そのカリスマ的な音楽と共によく語られるのは、彼の温かく気さくなお人柄だと思いますが、私が大感動した前述の演奏の前後、こんなことがあり思わず絵日記に残していました。
それは私が2001年にレッスン受講生として参加させていただいた別府アルゲリッチ音楽祭でのこと
マルタ•アルゲリッチ氏とネルソン•フレイレ氏の出演する演奏会に、急遽ギトリス氏と(私がベルギーで師事していた)ピアニストのアラン•ヴァイス氏が飛び入り参加し、スプリング•ソナタを演奏されたのです。
どのくらい急だったかというと、コンサートの開演2時間前にアルゲリッチ氏にお願いされたそうで!
ギトリス氏:
(演奏前に舞台上で、観客に向かって)2時間前まで、まさか弾くことになるなんて考えてもいなかったんだ!この曲弾くの随分久しぶりだから、もし僕が途中で落ちたりしたら誰か口笛で教えてね!
ヴァイス先生:
(演奏会後)あれは冗談じゃなかったんだから!2時間前に言われてリハで全曲通す間もなくそのまま本番だったんだよ〜。
イヴリーとの共演はスリル満点で最高にエキサイティングだった!とも。
「マルタはほんと無茶振りするから〜〜」
と笑いながらも、まんざらでもなさそうなお二人が印象的でした(お二人ともアルゲリッチ氏とは親交が深い)。
そして熱演の後
興奮冷めやらぬ中楽屋にお邪魔すると、、、
ヴァイス先生:ちょっと〜、チョコパイ僕の分も残しておいてよ〜
ギトリス氏:今日のギャラ、今日のギャラ♪
(音楽祭の期間中ずっと持ち歩いていた鞄代わりのショップバッグに、楽屋のバナナやお菓子を詰めるお二人…)
本当に凄い方というものは、気取っていないのだなぁ…と、
別の意味でも感動した夜でした。
その後、音楽祭期間中にギトリス氏は私のショパンのバラード第4番をふらっと聴きに来てくださり、涙してくださったそうで、
フードセンター(!)でお昼をご一緒しつつ惜しげもなく音楽のお話をしてくださったり…
今も心に強く残るその音楽、存在感、優しくお茶目なお人柄に触れさせていただいたことに
感謝の気持ちでいっぱいです。
ご冥福をお祈りいたします。



