前回の記事「食糧生産は農家が従事してこそ~略」の続きになります。

タイトルに「先駆けて」と付けましたが、集落営農という形態は別に
新しい試みでもなんでなく20年、あるいはもっと前からあります。

若い農水省職員の方が知らないのはふざけた話です。
農家さんの会合の現場で恥かいて涙目になってご苦労様。
もうちょっと勉強してから顔出しましょうね。

名誉の為に氏名は明かしませんが、政治家の言う事を鵜呑みで聞いてる内は
絶対に現状を把握出来ませんし、逆に国内農業を壊してしまう事を認識して下さい。

---ここから農家さんから聞いた話---

集落営農と言っても様々で、作物を統一して地域産地を形成したり
完全にお財布を1つにした(収益全てプール化してから分配)グループだったり
何軒もの農家さんが集まり法人を立ち上げたり
株式会社を設立して、加工、小売りまで手掛けたり
共通の作物は1つだけ、後は好きな物を作りますが機械だけ共有したりと
まあ、一定地域の集まりで何かを共同で行動する事を指す様です。

国、都道府県、市町村単位で補助金制度が存在して、
新たな機械導入、農地区画整理等、多岐に渡る補助金制度は
単一農家よりずっと有利です。

上記に上げた5つほどの集落営農(集約含む)は全て破綻したケースです。
もちろん継続して続けられている方々もいますが
お話を聞かせて頂いた地域では、1割程度しか残っていません。

作物を統一して単一生産物を作る地域は市況での下落を受け
あっさりと2年で解散。
ブランド化する前に破綻しました。

お財布を統一したグループは分配金で揉めて、暴力事件にまで発展。

Aさんが100円の作物、Bさんは75円作物、Cさんは50円の作物(平均単価)
でも収益はプール計算になりますので、
Aさんの場合は当然100円採算ではありません。

しかしここで怒ったのはCさんでした。
50円と平均単価は低いのですが、作付け面積が他2人より断然大きく
さらに小売りもCさんの家族が主に請け負って、
A、Bさんの家族はパートに出て協力出来ませんでした。

最終的にA、Bさんは農業収入を大きく上げましたが、
Cさんだけが収入を大きく下げたのでした。
小売りに携わったCさんの家族の手間賃は日給で支払われましたが
グループ結成前よりも収入が下がった(他人に吸われた)事、
販売に協力してくれなかった事も手伝って、激怒したのでした。
結局1年で解散です。


法人、株式会社は同様に赤字経営で破綻しました。
作業機械・加工施設の負債と人件費が経営を圧迫したのです。
作業機械や加工施設は補助金を利用しましたが、全額補助ではなく
3割、5割補助が限界で、さらに価格上限設定があり、どちらも
数億単位での設備投資を余儀なくなれました。

最初から規模が大きい事。
生産・加工・小売りの為の設備投資も規模に合わせて大きい事。
個人農業と違って、給料が発生する事。
初年度から役員報酬を設定した事等々…。

農業収益は微黒で推移していきましたが、人件費の支払いは滞り
機械・設備の借入金の利子も払えず、どちらも十数億の負債を残し破産。
初年度から破産まで法人、企業としての決算は赤字だったのです。
土地も機械も設備も、すべて差し押さえられました。


最後の農業機械共有ですが現在進行形で揉めています。
農作業は季節性が非常に高く、適期に作業出来ないと作付け出来ません。
農地を耕起するのにも順番待ち。
最初の人と最後の人とでは実に10日以上の違いが出ました。
集約された集落営農とはいえ、農業機械の移動がさらにネックになります。
薬剤散布、収穫機にも同じ現象が起きます。

あわててお金を出し合ってもう1組機械を導入しますが、
それでも適期に作業するにはさらにもう1組の機械が必要になりました。
しかし、新型の農業機械を1つではなく1組(4つ)ですので
さすがにお金が足りずに、そろえる事は出来ませんでした。
そもそも、共有化に当たって全員が独自で所有していた機械を
却し、そのお金で新しく機械を更新した為、もう余裕がなかったのです。

現在進行形で揉めている理由は誰もが、もう辞めたいからです。
稲作の場合、適期を逃せば品質は大きく下がりますし、
畑作でも機械の都合で採算性の低い生産物を作らざるを得ないからです。
しかし、10戸を超える共有なので解散した場合農業機械は2組しかなく
継続も難しく、辞める事も出来ない状態になっていました。

来年以降、全ての農業機械を売却して、
お金を分配して解散する事が一応決定していますが
どうなるかは不明です。
機械を売却した場合、1戸にはわずかなお金しか渡らず
最悪1年作付け出来ない農家も出てくるからです。
結局参加した全ての農家が背負うのは借金だけになりそうです。


実はこの方々は事業に踏み出す前にきちんと経営の作成書を制作し、
公共機関に何度も足を運んで、採算性に関しては
第三者からもGoサインを貰っています。
地銀やJAも出資する際に作成書・計画書に太鼓判を押していました。

農家ですら計画書の中で配慮してなかった事が2つあります。
1つは天候です。
キャビン付きの最新型トラクターを手に入れても
雨で、だぶついた畑を耕す事は出来ません。
どれだけ綿密に作付計画をしても、たった1回の雨で変更を余儀なくされます。


2つ目はお金です。
今までは自分の家だけで完結していたものが
給料になったり、共有になったりした事が様々な誤解を産みました。
グループでやっても
法人・企業でやっても
機械を共有しても
劇的な増益も見込めない事、劇的なコストカットも見込めない事。
言われた通りにやれば収益が保障されると勘違いをした事です。
成功事例を元に算出された、綿密な計画であっても
当てはまるはずがないのです。

彼等は実体験の中でその事を認識したのでした。

集約された多くの農地、耕作放棄地は規模が大きすぎて
買い手が付かず荒地になったまま、どんどん値を下げています。
一部の土地は自治体が買い上げ、宅地に登記を変えて区画整理し
企業誘致の土地になりましたが、空地のままです。

そのまま農業を各自が続けていれば、見なくて済んだ風景でした。

でも集落営農に乗って残っている農家も1割程います。
彼等も確かに同じような形態で運営しています。
しかし残存農家さんに共通している事が1つあります。
それは開始時の規模が小さいということです。

無理なく、コツコツと少しずつ農地を広げ、少しずつ機械を増やし
雇用を使わず自分達で出来る範囲でしかやっていません。
作付けも無理がなく、1年通して作物を生産しています。

大規模農業がダメとは思いませんが、
それは農家が自力で広げていくのと
行政から助成を受けてドンと大きくするのとは、まるで意味が違うと思います。

大規模や企業化を最初に考えるのではなく、自分で「入り」の部分を決められる
販路を最初に考えてみてはどうでしょうか。
本当はJAや行政がやるべき事なのですが…。
特に国は完全に破壊する気なので、当てにしては駄目です。
TPPを理由に壊してきますし
TPPが妥結されれば完全に壊れます。

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電通がニフティと地方銀行を巻き込んで加工・流通に手を出してきました。
第一弾は秋田県。
JAの持つ加工の旨味はこの先狙われて行きます。
というかこれもJAが何もしてこなかったからですよね。

pdfには秋田県の企業であろう事業者が手を上げています。

直接買い付けの機会が増える農家さんにとっては
販売経路が広がると余り批判の声は聞こえてきませんが
果たしてどうでしょうか。

利用者にアイデアを寄こせと謳っているこの企画。
一緒に作り上げていくと言えば聞こえはいいですが。

うまいもんプロデューサー
http://www.nifty.co.jp/cs/newsrelease/detail/131011004269/1.htm

このブログの「なまはげェ」は秋田県男鹿市のなまはげから付けています。
秋田県は農業県だと思いますので、安易に飛びついて
痛い目を見ない事を願っています。
ニフティと銀行だけならともかく、電通が関わっているのが何とも。
まあ考え過ぎかもしれませんが。

ただ、この仕組みだと加工業者と消費者の話合いだけで
生産者の「入り」は関わってないので、安く買い叩かれるのだけは
容易に想像出来ます。
仮に加工まで手掛けている農業法人だとしても、
自分で「入り」を決められない仕組みでの展開はしんどいと思います。

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他にも色々な話を聞きましたが、少しずつ書いていこうと思っています。

相変わらず読みにくい文章でスミマセン。
最後まで読んでくれてありがとです。