振り返って小野武彦には、折に触れて思い出すせりふがあるという。脚本家の山田太一(89)が書いた青春ドラマ「ふぞろいの林檎たちⅡ」(昭和60年)出演時のもので、こんな言葉だ。 


「世の中、やりがいがぎっしりつまった仕事なんて、100万に一つよ。だからといって次々辞めてりゃあ、一生辞めて歩かなきゃならねえ。意味のねえ苦労でも、やりがいのねえ仕事でも、黙って立派にやり通す人間になるんだ。」



大学に入る前のなんだか気だるい春休み、ふぞろいの林檎たちのシリーズが一挙再放送されていて、はまってしまった。

中でもこのセリフをわたしはよく覚えている。

柳沢慎吾が、大学からの友人で新卒同期の時任三郎とともに参加させられた合同の合宿研修で、愚痴をこぼしていたところ、鬼教官・小野武彦に見つかり、みんなの前で説教されるシーンだ。

今になって身につまされる。

それにしてもこの俳優さん、ぜんぜん印象が変わらない。息が長い。まさに、同じ仕事を愚直にやり通した結果なのだろう。