ベネッセの個人情報漏えい事件で時の人となっていた原田泳幸同社会長兼社長のことが少し気になっています。この事件が起きたとき、マクドナルドの原田さんがいつベネッセのトップになっていたのか?と驚きました。


私の知っている原田さんは、アップル社からマクドナルドのトップに転進され、「マックからマックへ」と報じられたときのこと。原田さんがマクドナルドのトップに就任後にテレビ東京「カンブリア宮殿」に出演され、趣味がドラム演奏、奥様がシンガーソングライターの谷村有美さんだと知り、堅物さのイメージとは違った人柄に少し驚いた次第。


一方で、その技術畑のキャリアからサービス業への転進には、経営コンサルタントの大前研一さんが次のような懸念を示されていました。



原田 泳幸

原田氏はアップルコンピュータの日本代表から日本マクドナルドへ転じた、いわば典型的アメリカンスタイルの経営者です。すなわち、コストダウンや価格戦略を重視する経営スタイルがその本質であります。


・・・「進研ゼミ」などの教育事業や老人介護事業などを展開しているベネッセは、確固とした企業理念と人間的な温もりが必要な会社。


それに対して原田氏は、コストダウンや価格戦略を重視するアメリカ型の経営者であり、日本マクドナルド創業者の藤田田氏が亡くなった時に社葬どころか会社として偲ぶ会さえ営まなかった人物だ。そういう合理的思考の経営者がベネッセの適切な舵取りと変革を担うのは極めて難しいだろう。


そんな折、報道番組の特集で、東京・町田市にあるパナソニック専売店「でんかのヤマグチ」を取り上げていたことを思い出しました。街の電器屋さんから、街の何でもサービス請負店へというコスト度外視の仕事ぶりに焦点を当てていました。


集客。言わば、定義は異なりますが、店に呼び込むPUSH戦略と、店から飛び出して顧客に接するPULL戦略。このために活用する従業員、スタッフの費用をコストとみるか否か?ここに日本総研コラムの次のような指摘があります。


人件費とは単純な費用ではなく、人という資産をリース購入した費用の割賦費用である、と言い換えることができます。良く論じられる「人件費リスク」というものは実は「人的資産リスク」。

(20060619日 平康 慶浩)


今回のベネッセの問題は、こうしたアメリカンスタイルの経営手法が原因ではありませんが、原田さんが関わるこの二社の問題の奥底にどこか潤いのない人間関係が感じられるのは私の勘違いでしょうか?


コストとして扱われる「労働者」は、所属先にロイヤリティ(loyalty)を持ちがたく、その仕事に価値観を見出しがたい。企業である以上、付加価値をいかに高めるかは優先課題。ブラック企業とまではいかなくとも、従業員を流動的に考える企業は少なくありません。


かつて「成果主義」が注目されたとき、一方で「ナレッジマネジメント」への注目も高まりました。人件費ではなく人的資産。高度成長期の日本企業の人事のありようは、ジェイムズ・アベグレンがかつて日本的経営の特徴とした終身雇用、年功序列、企業別組合。


現在の経済環境下において、こうした人事政策は時代錯誤の観もありますが、余人を持って代えがたい人材の育成が結果的に付加価値を高めることになるのだと思えます。経営者にとって人材不足による業務縮小ほど口惜しいことはないはずですね。








なぜこの店では、テレビが2倍の値段でも売れるのか?/山口 勉(でんかのヤマグチ代表取締役社長)

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